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 よくよく見ると、その小さな女の子は、これまた小さな子猫を抱えて

いました。

善行さんにおびえていても、逃げない…ということは、おそらく女の子

にとって、のっぴきならない事情でもあるのでしょう…

そう推測をしていました。

「お嬢ちゃん、その子はどうしたの?」

聞かずにはいられずに、言葉にしてしまった…という感じで、思わず

漏らしてしまいました。

女の子は相変わらず、引き戸の真ん前の石段に腰を下ろしたまま、動こうとは

しません。

善行さんは目一杯の笑顔を浮かべるも、かなりの勢いで、頬が引きつるのを

止められません。

この場に鏡がなくても、どんな顔をしているのか、想像できる善行さんなのです。

案の定、女の子は見上げたまま、固まっています。


「ごめん、ごめん…」

一応謝ってはみるものの、善行さんは少し傷ついていました。

するとふと、脳裏によぎるのは、亡くなった奥さんに言われたことです。

《あなたは、怖い顔をしているのだから…

 小さな子供に、近付いてはダメよ!》

そう常々注意されていたのを、思い出していました。

そういえば…姪っ子や甥っ子が幼い頃、彼が声をかけると、きまって

泣き出して、大変だったなぁ~と思い出していました。





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