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初めは、近所の子供が遊びに来ているのか、それとも迷子なのか…
と、思っていましたが、どうやら違うようです。
何だか途方に暮れたような、泣き出しそうな、そんな顔です。
こんな朝早くに、一人でいる…ということは、よっぽどの事情が
あるのでしょう。
そぅっと近づくと、その子は引きつった顔をします。
(まいったなぁ~放っておくわけにはいかないし。
かといって、秘策があるわけでもないし…)
そうつぶやきつつ、善行さんは近付いて行きます。
通りを渡り、自宅に近付くと、その女の子は、それまでうつむいていた
顔をようやく上げました。
つぶらな瞳の、オカッパ頭の女の子です。
年のころは、4~5歳くらい。
その胸には、フワフワとした生き物を、大事そうに抱えています。
「こんにちは、お嬢さん。
お嬢さんは、どこの子かな?」
声をかけると、その子はビクンと身体をこわばらせます。
「ごめんねぇ~驚かせちゃったかな?」
やはり、今にも泣き出しそうな顔をするので、善行さんは困ってしまいます。
「オジサンはね、ここの人なんだ。
お嬢ちゃんは、オウチはどこかな?」
笑顔をひきつらせたまま、かがみ込むと、女の子は泣き出しそうな顔はしても、
それでもその場を動こうとはしません。
こうなったら、もはや返事がかえってくるとは思えずに、さてどうしたものか、
と善行さんは考えます。
「ゴメンネ。オジサンは、決して怖い人じゃあないんだ…
ここの人なんだけどね、お嬢ちゃんがそこにいると、オウチに入れないんだ…」
への字眉毛を作って、玄関を指差します。
するとようやく、女の子はニコッと笑顔を見せました。
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