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朝の空気は、とても爽やかで気持ちがいい…
胸いっぱいに吸い込むと、彼はゆっくりと歩きます。
近所のパン屋さんや、早朝から開いている豆腐屋さんをのぞくのが、
善行さんは好きなのです。
歩き出すと、早朝ジョギングをする若いサラリーマンや、少しお腹の
突き出した中年の男性が、汗をぬぐいつつ走っています。
まだ夜が明けたばかりなので、ひと気もあまりなく、とても静かです。
車もあまり走ってはいません。
だから排気ガスも、騒音もしないので、純粋に静けさを楽しめるのです。
もちろん、始発の電車を待つ人も、いるにはいるのですが。
時折、猫たちが塀の上を歩いているのを見かけると、
「おはよう!」と、声をかけます。
なぜなら、なじみの黒猫のボスが、混じっていることもあるからです。
たまに、信号が点滅を繰り返しているところもありますが、それもまた
早朝ならではです。
人通りがまだあまりないので、信号も必要なかったりするのです。
善行さんは慎重に、川を渡り、そこから豆腐屋、パン屋、それからコンビニ
へと、グルリと回ります。
たまに歩いている途中で、ボスを見かけることもありました。
そうすると
「おい、おまえ、こんな所まで、遠征して来てるんだ」
と思うのですが、ボスはそれにもそ知らぬふり。
照れているわけではなさそうなので、善行さんのことを、ヨソモノ扱いしている
のに、間違いありません。
善行さんがコンビニの袋を下げて、家へと帰って来ると、玄関先に小さな女の子が
うずくまっているのが、目に入りました。
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