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 若者が風呂敷を解くと、紺色の布地の間から、鮮やかな色彩の古伊万里

の皿が、姿を見せました。

白い地に、金で縁取った花鳥風月の文様が、モチーフになった大皿。

 思わず二人のオジサンたちが、

「おおっ」と声を上げて、見入っています。

その二人の様子を見て、少し得意気な若者です。

そぅっと皿を、テーブルの上に乗せます。


「こ、これは、どういったもので?」

 よっちゃんは言葉に詰まりながら、若者に聞きます。

若者は軽く皿の縁をなぞりながら、

「さぁてねぇ~蔵にあったから…」

もったいつけるようにして、よっちゃんの方を見ると、

「いくらぐらいになる?」

弾んだ目で聞きます。

出た出た~

二人は顔を見合わせます。

まさか、盗品なのか?

善行さんはじぃっと見つめながら、顔が引きつっています。

やはりよっちゃんも、顔をこわばらせます。


「これは…どういった、思い出の品ですか?」

「思い出もなにも…」

 若者が、大きな声で言います。

「ばあちゃんが亡くなって…今、我が家はしっちゃかめっちゃかなんだ!

 いわゆる、遺産相続ってヤツ?

 ウチのババアがあまりにも、大げさに騒ぎ立てるから、腹いせに、

 オレの取り分を取ってきてやった!

 ところで…幾らで、買い取ってくれる?」

ケロッとした顏で、二人に向かって言います。

「こういうのって、木箱に入ってると、思うケド」

ふと思いついて、善行さんが口をはさみます。

若者は白けた目をして、善行さんを見ます。

「そんなもんは、知らねぇよ。

 箱に入ってないと、認めてくれないのか?」

ムッとした顔で切り返します。

たまたま、これを持ってきた…ということで、骨とう品に対して、何ら

思い入れもない…ということを、さらすことになってしまいました。



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