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 若者は何も気を遣う様子もなく、そのまま中に入り込もうとしました。

「おい、ちょっと!」

あわてて善行さんが声をかけます。

「ここは、土足禁止なんだ。靴を脱いでもらえますかねぇ」

善行さんに声をかけられて、一瞬はっ?という顔をします。

「ほら、畳!畳が傷むでしょ!」

けれど若者は嫌な顔をして、

「なんだ、土足じゃあいけねぇのかよぉ」

面倒臭そうに言います。

それでも、しぶしぶ靴を脱ぐと、部屋の中へ。


 善行さんはすでに、厄介なヤツを入れたなぁと、後悔しています。

そんな善行さんの気持ちを、知ってか知らずか、ズカズカと足を鳴らして入り、

キョロキョロと珍しそうに、家の中をのぞいてます。

「ここってさぁ、何屋さんなわけ?」

遠慮も何もなく、ジロジロと観察しているようにも見えます。

「なぁ、オジサンって、ここに住んでいるの?」

「そうだよ」

ふーんと、値踏みするように、見回しています。

古い民家なので、障子やふすま、欄間など昔の建具がそのままで、床の間や床の間の

掛け軸など、とても珍しそうにしています。


「で、何を持って来たんだ?」

 善行さんが口を開きます。

カーキ色のズボン、黒いドクロのTシャツ、穴あきソックスのいでたちで、

それには似つかわしくない、紺色の風呂敷包みです。

二人は何となく、距離を取って、目を見合わせています。

(なんで、こんなヤツ、入れるんだよ!)

一緒にいるよっちゃんを、軽くにらみつけます。

だが、当の若者は、そんなことは気づかない様子で、

「やっぱ、見る?興味、ある?」

自分から来たわりには、ちょっと嬉しそうです。

(まさか…盗品じゃあないだろうな)

怪しむ善行さんをよそに、得意気な顔をして、若者は風呂敷包みを見せました。

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