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なぜだかわからないのですが、結局三人で朝食をという流れになりました。
(なんで、オレがしないといけないんだ!)
ここは、食堂じゃないんだぞ、と男はよっちゃんをにらみました。
よっちゃんは全く、どこ吹く風です。
「まずは、自己紹介といこうか!
ボクの名前は、久保 良明。
通称よっちゃんです。
この不愛想なオヤジが、ここの主、鈴木 善行。
通称ゼンコーさんです」
おいおい、勝手に、自己紹介をするなよ!
大体、お見合いパーティーや、合コンでもあるまいし、
なんだって、気取ってしゃべっているんだ!
男、改め善行は、心の中で何度も、よっちゃんを罵倒しました。
まぁ、現実は、黙って苦虫を嚙み潰したような顔をしていたくらいで。
よっちゃんはヘラヘラしたまま、女性の顔を見ました。
お次は、キミの番だ、と言わんばかりに。
するとよっちゃんの視線に戸惑いつつも、女性は立ち上がります。
「あ!立たなくても、いいですよ」
仕方なしに善行が声をかけるのを耳にして、再び座り直し、咳払いを
しました。
「私の名前は、樫谷 翔子。
まだ正式には離婚していないので、旧姓は名乗ってはいません。
主人が家を出て、ようやく半年経ちました。
今はまだ、主人がどこにいるのか、わかりません。
警察は、成人男性の失踪に関しては、事件性がない限り、捜索して
くれないんです。
このままズルズルするのは、よくないとわかってはいるのですが、
まだ踏ん切りがつかなくて…」
いきなり、本題に入っていました。
よっちゃんはあわてて、
「まぁまぁまぁ…」と、話の腰を折り、
「詳しい話は、メシを食べてからにしませんか?」
声をかけます。
そのことに関しても、善行は納得がいかず、
(オレの客なんだぞ。
なんで、お前が仕切るんだ)
面白くないのです。
目から殺気を放っています。
すると、鈍いはずのよっちゃんが振り向くと、
「おいおい、なんだ、ゼンコーさん!
おっかない顔をして~!」
ヘラリと笑います。
「おまえ、ちっとは手伝え!」
グィッと首根っこを捕まえて、バタバタと手を動かして、抵抗するよっちゃんを
無理やり立たせます。
翔子さんは、けげんな顔をして、二人を見送りました。
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