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「おまえなぁ、調子にのりすぎ!」

 男はよっちゃんに向かって、声を荒げます。

「仲がいいんですねぇ」

その女性が笑います。

「いいなぁ~私にも、そんな友達、いればいいのに…」

よっちゃんと男は、顔を見合わせます。

「私ね、男に逃げられたの」

ポツンと言います。

「結婚してたの。幸せだったのよ!

 何の問題のない、平凡な新婚生活だった。

 なのに、ある日、突然…」

女性は、ふぅ…とため息をつくと、男はあわてて、コーヒーのカップを

差し出しました。


「すまん!こんなカップしかなくて」

 女性は頭を振り、「ありがとう」と小さく言って、カップを手にしました。

「暖かい…こんなの、久しぶり…

 入れたての香りって、幸せな気分になりますよね…」

ため息のように、言いました。

よっちゃんは男から、カップを引ったくると、女性の前に座りました。

「そうだろ?いいから、溜まったもん、全部吐き出しちまいなよ!

 オレたち、聞くからさ!掃き溜めに鶴ってさ」

「なんだ、そりゃ!」

ほっとくと、何を言い出すのか、わからないなぁ~

男は、自分の友人に向かって突っ込む。

「それを言うなら、『王様の耳は、ロバの耳』だろ!」

よっちゃんは、指差し確認して、

「そうだよ、それそれ!」

「全然違うだろがい!」


 二人のやり取りを見て、女性はくすくす笑う。

「そうねぇ~聞いてもらおうかしら…

 その前に、荷物、預かってもらえますか?」

女性はひたと、男の方を見詰めました。

男はまいったなぁ~という顔で、頭をかきつつ、

「いや~まだ、店が出来てないんだけどね…」

すると、よっちゃんがぐぃっと身を乗り出して、

「おまえ、もったいつけてんじゃぁねぇぞぉ」

男に向かって言います。

でも、と男は食い下がり、

「だけど…生物や、大きいものは、ダメなんですけどね」

困った顔をします。

 少し曖昧な顔をしているのを、見て取ると、

「ちょっと待ってて!」

女性は外に飛び出しました。

その間に、男はよっちゃんをどつきます。

「おまえなぁ~でしゃばりすぎだろ!」

軽くにらむも、そんなことでひるむような、よっちゃんではありません。

「チャンスじゃないかぁ。

 これをきっかけに、お客さんが来るかもしれないぞぉ」

美女を相手にしていたので、余計に張り切るよっちゃんです。

それに気が付くと、男はあきれ果て…

「お前なぁ~」

言葉を失う男なのでした。






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