Case1 忘れられた花嫁
1
若干、警戒心をむき出しにしている女性を、居間に招き入れました。
とにかく、第一号のお客さんなので、まだ勝手がわかりません。
緊張して、ギクシャクしてしまいます。
いつもの《ヒトたらし》の才能も、ここでは死んでしまっています。
とりあえずは…と、
「お茶でも入れましょうかねぇ」と、腰を上げます。
「おかまいなく」
そう言いつつも、落ち着かない様子。
場の雰囲気が固くて、いたたまれません。
沈黙の空気が、その場を支配しています。
女性が「やっぱり、わたし…」と言って、腰を上げるのを、
「じゃ、ボク、コーヒーね!」
と、よっちゃんが言ったのとが、同時でした。
へっ?と聞き返すと、余裕のよっちゃんが、ズカズカと二人の間に
入り込んできて、
「よろしく」と澄ましています。
「おいっ!」と男。
「お前、図々しいぞ!」
よっちゃんを小突きます。
「じゃ、わたしも…」
背後から、小さな声が聞こえてきました。
頭をくしゃくしゃとして、しゃーないなぁ~と、彼はしぶしぶ立ち上がります。
「コイツの入れるコーヒーね、うまいんですよ」
よっちゃんが、嬉しそうに言います。
「なぁ、ゼンコーさん!何なら便利屋じゃなくて、喫茶店でもしなよ。
純喫茶!おれたちのたまり場にするんだ」
「おいおい!」
男はエプロンをつけます。
「お前らの、たまり場にするつもりはないし、元々たまり場みたいなもんだろ?」
「あはははは、そうかなぁ?」
よっちゃんは笑ってごまかす。
「お姉さん、この人、中々いいヤツなんだよ!
よければ、仲良くしてやってね」
さらに、付け足して言う。
コイツ、図にのってる!
男は「おいっ!」と語尾を強めて、
「お前、帰れよ」と小突きます。
よっちゃんは、あははと豪快に笑い、
「冗談がキツいなぁ~ゼンコーさん!」と話しかけました。
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