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 女性が、室内に入ろうとすると…それを横目に、よっちゃんが

ちょいちょい…と、男を手招きしました。

「ゼンコーさん、あんた、どういうつもりなんだ?」

よっちゃんのニヤニヤ顔が止まらない。

「おまえさぁ、新聞広告を出したって、ホントなのか?」

「ああ」

男は早速、今朝の新聞を見せました。

「あなたの思い出、預かりますぅ?

 本気だったのか?定年してから、したいことって!」


 そこへ、先ほどの女性がけげんそうに、コチラをうかがっています。

「あのぉ~帰りましょうか?」

もうすでに、気持ちが萎えてしまっています。

事情は知らないけれど、ためらっているのです。

「後でな!」

ポンポンと、よっちゃんの背中を叩く。

「どうも、ごちゃごちゃして、すみませんねぇ」

そう言いつつ、女性の方に近付きます。

「申し訳ないです。

 まだちゃんとしてなくて…

 でも、こちらは大丈夫ですから…」

そう鷹揚な態度を見せるのですが、若干、彼女目には警戒心が見え隠れ

しています。

 かくいうこの男、ティーンエイジャーから、お年寄りまで、幅広い年齢

の女性たちに、好感を与える特技があるのです。

もちろん、本人には自覚がないのですが…

「何を言っている。ただのオンナタラシなんだろうが」

そう邪推されるのだけれど。

彼は、そんなことはない、と相手にはしません。

「とにかく、お話を聞かせてください」

そううながすと、ひとまず居間に、彼女を通すのでした。

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