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 男は女性に近付き「どうされました?」と聞きました。

女性は、よっちゃんを指差し、

「ドロボーが…」と固まったまま。

「あ?あぁ…」

男は、笑いました。

「驚かせて、ごめんね!…あれは、ボクの友人なんです」

「あら?あぁ…」

女性は納得して、

「よかったぁ~」

ホッとした顔をします。

「このチラシなんですけど…ホントに、預かってくれるんですか?」

そう言いつつ、携帯に写した例の新聞広告欄を見せます。

「きれいに撮れているなぁ」

どう返したらいいのかわからなくて…

男の声が、少しかすれています。


「実は、広告を早々に打ったんだけど…まだ、店を開いていないんですよ。

 大きなものだったら、預かれませんが、小さな物だったら、大丈夫です」

 そう言いながら、チラッと彼女の顔を見ました。

女性は少し、落胆したように、

「そうですか…」と言って、背中を向けます。

少し寂しそうなその顔に、思わず男は声を上げ、

「待って!お話だけでも、聞かせてください」


 なぜなのかは、わかりません。

あまりにも、寂しそうな横顔だったので、つい魔が差した…

としか、言いようがないのです。

 女性は振り向き、

「いいんですか?」と聞いてきます。

なので彼は、チラッとよっちゃんの横顔を見て、上に上がるようにと、

うながしました。

靴を脱いで、足を踏み入れるのと、

よっちゃんが、意味あり気にニヤッと笑うのが、同時だったように、

彼には見えました。

 

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