第8話 怜也の日記①
―――6月14〜15日の出来事―――
〜AM1:00現在〜
精神状態の不安定さが顕著に表れた1日だった。夜勤帯〜日勤帯の看護師の数の多さと業務量の多さに心悩まされた。
金本さんが恐らくリーダーという事で詰所から出てくることはなく、淡々と仕事をこなすが
金本さんは笑顔が少なく表情に強張りを感じた。看護師という仕事は職業柄、
患者に不安感を与えることをしてはいけないため、極力、笑顔で過ごさなければならない。
しかし状態のいい患者を相手にするときは笑顔を忘れがちである。その背景には―――
『あなたは理解力のある患者だから、今忙しいことは見てわかるでしょう?」と裏腹な感情が同時に存在していることは
混乱してる患者にとってもいち早く察知してしまうものだ。
その際にお互いにどう問題を解決していく事が大事かを今日の当直看護師と話し合いお互いに合意できたと感じた。
杉下さんと岡本さん、遅出の古村さんと会話する事で、もう少し人を信用しても良いのかもしれないと思うが、
幼少期から続く人間関係のもつれや幻聴、幻覚といった病的な症状から来る感情が邪魔をして脳を支配する事についても、
今後、自分が怒りっぽくなる際に、どう対処すべきかを考えていくべきなのだと、今回の入院経験から判断するとそう感じた。
まず大事なことは睡眠と食事である事。時間もきっちりと決められた中で実行する事で体形も維持しやすく
理想の自分となれる事が殆どである。まだ私に課せられた命題は数多く存在し、今、死ぬべきではないと判断できた1であった。
明日はもう少し、看護師にも優しく接しようと思う。
―――6月15日の出来事―――
〜午前〜
今日の将棋は夜間眠れなかった為、午前4時半に銀築さんと将棋を指した、銀築さんは認知症が進んでおり、
物事ははっきりとわかるものの1分以内に忘れてしまう老人だ。結果は敗戦。睡眠不足による頭の回転不足と判断。
大泉さんとの会話によりメンタルを持っていかれる。大笠さんを不安にさせたと自覚。
朝6時の点灯により気分は向上。徐々に増えていく看護師と申し送りの長さから検温の待ち時間と服薬の待ち時間により苛立ちが募る。
9時45分頃に申し送りが完了。銀さんが検温役を担当。「昨日はお疲れ様でした。」と労いの言葉を掛ける。9時55分頃に入浴。
好きなシャンプーとコンディショナー。ボディソープの香りに触れ、ご機嫌に成る。10時45分頃に売店へ親しい友達と行き
ゼロコーラと蒲焼さん2枚、ビッグカツ1枚、一口ソースカツを一つ購入。
南デイルーム近くのテラスでみんなで食べる、飲む。まるで宴会だ。いつものルーティン。楽しい。
西デイルーム近くのテラスで皆んなで食べる。完食だった。昼食前は看護師の美山さんに自前の作詞を見て貰う。
褒めていただき、とても嬉しくなった。もっと曲作りを頑張ろうと思えた。昼からは村上さん、大笠さん、上田くんが外出に行く為
少し寝ようと思う。寂しさを紛らわす為でもあるが、何よりこうして文章を記入していても少し眠たい。
友を見送った後のことは後で考えようと思う。先ずは昼食後の配薬で自己管理BOXへ薬を置く事が重要である。早く来てほしいものだ…。
14時頃、真衣子ちゃんと喋った。他愛のない会話をした。
再び床に着くが頭痛により起床。古村さんからロキソニンを貰う。
服薬により、眠気が来るのを待つが、待っている際に妻から病棟に連絡があったそうだ。
外出が認められた。火曜日の予定が明日になった。嬉しい。
少し心の霧が晴れた気がした。ブルーだった心情が急にピンクに変わった。気がした。
赤にならない様に祈る。もう少しで若い子達が帰ってくる。朗報が楽しみだ。
明日は父の日だが、親孝行できるだろうか。父親が来るのだろうか。
不安は残ったままだ。何よりも和解したくてもできない、そんな自分が腹立たしく苛立ってしまう。
とりあえずはゆっくり昼寝でもしよう。おっと配茶の時間だ―――
〜午後〜
午後からは村田さんと大笠さん、上田くんが病棟に戻るが
調子が良さそうに見えた反面、今の精神状態をキープする為、各自、病棟に主治医の坂元先生が来る。
少し緊張した。また同刻ー
古村さんとテラスで患者さんを交えて会話する。少し緊張が解けたようにも思えたが、
亀田さんが「(精神的に)圧迫してくるな!」と少し疲れた表情を見せていた。
不眠による苛立ちが顕著に表れている。やはり睡眠は大事であると再認識。
最近、少し肺が痛む。喘鳴の様な呼吸がたまに出てしまう。おそらく煙草の吸いすぎであろう。
アイコスに転換してみようか検討している。紙巻きも好きだが、何より求めているのはニコチンである事に変わりはない。
そう依存なのだ。明日の外出でアイコスの購入をお願いしてみようと思う。うまく行くと良いのだが…。
最近、検温時にパルスオキシメーターを使用される事が多い。肺気胸の疑いがあるのだろう。そう確信した午後の夕刻時だった。
17時からは当直である有村さんが来る。担当看護師ということもあり、安心感が有る。
入院中に記入しているこのノートについても拝見して貰おうと思う。申し送りが終わるまで漫画でも読もうと思う。
20時25分まで自室で睡眠を摂った。肺の痛みは少しマシだ。
デイルームではいつものメンバーがUNOをしている。その姿を見るだけで楽しくなる。
大笠さんが一抜けだった。見ていて楽しい。大事にしているくまのぬいぐるみの名前で盛り上がる。
ちなみに大事にしているおつひこくんは乙と彦で七夕をイメージしてつけた名前だ。少し恥ずかしかったので
妻には未だに内緒にしている。早く退院して猫のちぃちゃんとおつひこくんに会いたいと思う。
22時ぐらいに妻に電話をして用件を伝えようと思う。
今日のところは一旦、ここまでが出来事である。ノートの行数も残り少ない。
また明日。
―――6月16日の出来事―――
〜午前〜
AM3:00起床。頓服は昨晩21時50分に服薬。3時前にも起きて病室を間違って入ってしまう。少し反省している。
4時20分頃、大好きな銀築さんが起床。眠れない為、将棋を指す。結果は勝利。今日は妻と外出だ。楽しみだ。
良い1日になるといいなあ…。梨山さんも起床。中庭にて商品開発と作曲について話し合う。
やはり双方時代に求められているものを作らなくてはならないとウォーキングしながら話し合った。
デイルームにて宮本さんと談笑。もう少しで6時の点灯だ。空は既に明るい。少し眠いな。
部屋へ戻って一眠りするか。病室に戻るBLEACH29巻を読んでいたら極限に眠くなってきた。
本格的に寝るか!朝ごはんがもう少しで来る。早く食べたい。
奥ではラジオ体操の音楽が聞こえる。いつもと変わらない朝だ。予報だと雨だったが天気は晴れ。清々しい朝だ。
病室はエアコンが効いていて涼しい。額の吹き出物が気になる。まるで高校生に戻った感覚だ。
この病院は時を止めるだけでなく戻しているようにも錯覚させる不思議な場所だ。
病院の室内のルームメイトと談笑。少し気を遣う。朝ご飯は食パンだ。少し憂鬱だ。2枚あるとやはり1枚残してしまう。
真衣子ちゃんと談笑。相変わらず落ち着く。お酒はやっぱりダメだという話になった。
少し眠ろう。起床。妻に持ってきて貰ったBLEACH5巻分の30巻まで読み終えた。
今日、持って帰って貰おう。まだ詰所は当直の二人のみ。早く時間が過ぎてくれるように祈るばかりだ。
検温が廻っている。病室に居よう。少し眠い。起きた。おはよう、世界。
寝ている時はいつでも自由な世界なのに目が覚めると閉鎖病棟。少し辛い。
早く退院してアパートで暮らしたい。そう思う朝の検温待ち時間。
早く12時になって欲しいと願うばかりだ。10時45分には売店でゼロコーラを買おう。
少しでも気を紛らわそう。そうする他は無い。8時40分頃、銀築さんと2戦目の将棋を指す。
結果は勝利。大泉さんに将棋を教える。疲れた。
朝の薬の時間だ。今日は間に合った。病室でルームメイトと談笑。やはり男同士の会話は面白い。
10時30分からは売店の時間だ。45分くらいに一人で買いに行こうかな。
早くシュワシュワのコーラが飲みたいと思う。そんな10時ジャストの時刻。TVではバレーボールの特集。
スポーツにアツくなれるのはとても良い事だと思う。あと10分で売店だ。早くコーラ…コーラが飲みたい。
状態の悪い患者が多くて嫌になる。早く退院したい。村上さんと売店で買った商品を飲食して宴を楽しんだ。
もうすぐお昼だ。お昼を食べたら、外出だ。楽しみ。
〜午後〜
昼ご飯が11時45分に配膳。11時55分に完食。12時7分に外出した。
父親は来なかった。少し安心した。妻と何気ない会話をした。行き先はコープだった。
煙草はかなり吸った。咳が出る。肺は少し痛む。軋む様な気がする。
しかし止められない。依存体質を恨む。コープではお菓子を購入。14時まで妻と会話。
本当に心の底から好きだと思えた。やっぱり俺は妻が大好きだ。
病棟に戻ってきた。テンションは高め。少しセーブしなくてはならない。
保護室の患者が中庭に出ていた。少し会話をしてみた。だいぶ、テンションが上がっていた。
自分も釣られて笑う。引っ張られてはいけない。内にある自分は常に冷静でいなければならない。
自分の病室に戻る。高木くんと話をした。お互いの夫婦仲が大変である事に共感した。
デイルームでは野球観戦の黄色い声。とても良い、楽しい感覚。笑いが絶えない。
いつもの昼下がりに眠気はなく、昼寝もなし。大笠さんが15時10分に病棟に戻ってきた。
いつもの上田くん、村上さん、大笠さんと私の四人で西側テラスで宴会開始。
とても楽しい昼下がり。好きな看護師の話で盛り上がる。ひとしきり会話が終わったところで
阪神リード。夕食まで梨山さんとウォーキングをしようと画策。お供は水。
ペースが早く、少し歩き疲れた。病室に戻り日記を記入。夕食はまだかなあ。
畑田くんと会話をした。柴山さんは具合が悪そうだ。クエチアピンは睡眠薬ではないそうだ。
明日の問診でマイスリーに替えてもらえないか聞いてみようと思う。
デエビゴは嫌だ。よく眠れる薬が良い。クエチアピンは喉が乾く。朝、口渇に悩む。
リスペリドンも本当は嫌だ。太りたくない。ただそれだけ。一生、美味しい食事を摂りたい。
糖尿病は嫌だ。今日は雨の予報だったが、1日中晴れている。妻は最強の晴れ女。
俺は最強の雨男。相反する二人だからこそお互いを尊敬し合い、又、尊重できるのだろう。
そんな事を考えている17時28分。畑田くんに便箋を貰い看護師さんたちに一通の手紙を書いた。
17時45分夕ご飯。魚だった。美味しかった。ご飯後は梨山さんとウォーキング。銀築さんと将棋を2戦。
戦績は1勝1敗。脳を使ってダイエットを画策。今日はとても良い1日となった。
明日は問診。しっかり睡眠を摂って良い報告ができるようにしようと思う。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます