第3話 友との別れ
修学旅行では東京に行った。俺はギター用のアンプを買うため、小遣いを浮かしに浮かしてMarshallのアンプを買う事を目標に
お昼代も浮かした。リサーチでは集英社に行った。大好きな少年ジャンプの会社。感想は凄かった。ただただ凄かった。
仰々しかった、物々しかった。只、それだけ。
修学旅行の昼はディズニーランドに行き、夜はディナークルーズで過ごした。元々乗り物酔いしやすい私はダメだった。
ずっと船窓から見える景色を水を飲みながら過ごしていた。友に誘われ甲板に出る。夜風が心地よかったが
バカ騒ぎしてる中坊連中が嫌になってすぐに船内へと戻った。
船から降りる。どうも船酔いしたみたいだ。
直ぐにホテルで休みたい。ホテルの同室は文哉と過ごした。イケメンで物静かなおっとりとした性格だが
頭は賢く発言一つ一つが面白いやつだ。
夜は早めに寝て起きたらテレビをつけてみる。すると何と遊戯王の伝説回。遊戯VS羽蛾がやっているではないか。
すぐに他の部屋にも連絡した。小学生の頃から腐れ縁の鈴森の部屋に電話する。テンションがめちゃくちゃ上がっていた。
朝から大爆笑だった。
修学旅行から帰り、雅とまた時間を過ごす―――
俺がギターを弾いていてGLAYを好きなことが雅に知れるのは直ぐだった。
怜也少年は「俺がギターやるから、お前ベース弾けよ」と言った。「うん!」雅は二つ返事だった。
そこから二人で猛特訓した。GLAYやラルクの曲をひたすら練習した。めきめき上達していき
「俺たちバンドで食っていけるんじゃね?」と思っていた。
だが、現実主義の雅はそうは思っていなかった。「夢なんて見るだけ無駄。そう簡単に叶わないモンさ。」いつもそんな感じだった。
ただただ楽しい時間は過ぎていき俺たちは中学の卒業の日を迎える。
楽しかった。これからはもっと楽しい人生になるんだろうな。そう希望を抱いて旅立ちの日にを皆で歌った。また涙を呑んだ。
寄せ書きコーナーは白紙のまま、俺は雅と落ち合う約束をしてすぐに校舎を離れた。
卒業文集にはこう書いた。
〜『中学校の思い出』〜
”僕がこの中学校で思い出に残っている事は、学校で過ごした全ての時間です。この学校に入学して初めは、
「中学生なんだからしっかりしよう。」と決めていたけれど、日々時間が経つにつれ、いい加減な気持ちになっていました。
先生に反抗したり、部活をサボったり、暴れたりしてして、皆に迷惑を掛けました。
部活の無いテスト期間は毎日、ずっと友達と遅くまで遊んで、テストは毎回悲惨な結果でした。
今思えば馬鹿だったと思うけれど、何より、その時間を自分なりに過ごせた事が気持ち的に勝っている気がします。
ついこの間、入学してきたばかりと思っていたのに、もう卒業だなんて早すぎると思います。
思い起こせば、この中学校で過ごした時間のほとんどを友達と過ごしてきました。
笑い合ったり、喧嘩したり…。ホントに一時間一分一秒が全て楽しかったです。でも、僕は友達を無くしかけたことがありました。
自分の過ちが許せず、後悔してもしきれずに居ました。その時、支えてくれたのが、僕を信じてくれている親友でした。
仲が戻るまで時間は掛かったけど、いつの間にか普段の自分に戻っていました。
そこで僕は学校は勉強や部活だけではなく、他の大切な事を教えてくれる場所なんだと気づきました。
そんな大事な場所を今まで真剣に見つめていられなかった自分を恥ずかしく思いました。
だから、残りの学校生活を精一杯頑張ろうと決めました。
だけど、僕は自分でもわからない何かに躓き、がんばろうと決めていた事も破り、悪いと思っている事にも
ブレーキがかからず、学級委員の仕事をサボった事もありました。
その日、友達と遊ぶ予定を仕事が被ってしまって、僕は遊ぶ欲に勝てず、女子に仕事を押し付けてしまいました。
謝ろうと思っても、普段、女子と話せない僕は素直に謝る事ができず、仲の良い友達に代わりに謝ってくれないかと頼んだ事もありました。
でも、やっぱりそれだけではいけないと思って、何かできないかと考え、
実行に移そうと重い、そこで目をつけたのが合唱コンクールでした。
皆、恥ずかしくて歌い辛そうだったのを覚えています。そんな中でも「俺が声を出さなくて誰が出すんだ!」とこれしきとがんばりました。
罪滅ぼしでは無いけれど、せめてもの誠意を見せようと力をふりそそぎました。
合唱の練習で色々といがみ合ったけど、最後は皆と一つになれたことが一番の喜びでした。
結果は惜しくも2位だったけど、僕の中では、結果よりも大切な物が得られたと思っています。
最初はこの3年のクラスを最悪だと思っていたけど、今となれば、本当に良かったと思います。
僕に関わる友達、先生、家族。本当に本当にありがとう。進路は離れるけれど、この学校で過ごした時間は一生、忘れられない宝物です。
ホントにありがとうございました!”
―――と締めくくってある。
昔から過去を振り返る事大好き人間だな。将来のこととか書けば良いのに、俺。
マイナス思考人間は決して変わらない。性格はそんなに変わらない。
卒業してすぐにやってきた、4月。雅は頭が良く、地元でも有名な公立の2類に入った。方や俺は、地元でも一番頭の悪い府立高校に入学が決まっていた。
別々の道を歩むことにはなるが俺たちには絆ができている向かうところ敵無しだ。―――そう思っていたのも束の間だった。
他校の真美とは長く付き合っていたが別れることになった。
真美は雅と同じ高校に通うことに。俺は急に悔しくなった。俺も勉強頑張ればよかった。後悔先に立たず。
地元で一番悪い高校。噂は本当だった。鴉のような制服。茶髪に襟足の伸びた不良生徒、スカートの短い携帯にストラップを
ジャラジャラつけたギャルたち。そんな中、1-7だった私は1-5のギャルに声を掛けられた美弥という子でいつも休み時間になっては
校舎裏でマルボロの赤を吸っていた。キスの味は真美とは違うタバコの匂いだった…10日程で別れて同じ1-5の明理と付き合った。
とても明るい底なしに明るい子だった。
1-7はまだ他クラスと比べて学力的に小マシではあったが、授業は崩壊していた。授業中にも関わらず騒ぎ爆笑し風紀を乱す輩ばかり。
五月蠅いのは嫌いだ。特に人の声は不快でならない。俺はたまらなかった。勉強を頑張ろう。そう思っていたが…
目を付けられるのは早かった。海山聖二にタイマンを申し込まれた。鬱憤が溜まっていた俺は快くタイマンを受けた。
人目につかない橋の下でギャラリーを携えてやってきた。
多勢に無勢。俺は一人で聖二と対峙した。最初は押していたものの結果は負けてしまった。悔しかった。
ここでも俺は何者にもなれないのか…学校に通うのが嫌になった。
―――そんな時に16の夏、ベースの雅から連絡を受ける。
付き合っていた岐阜の彼女と別れたそうだ。
原因は雅の浮気だった。彼はとても後悔していた。見るに耐えないぐらい落ち込んでいた。
とても彼女と仲良くしていた雅は滋賀でチャリをパクって二人乗りをしていたところ、警察の御用となり
通っていた高校も停学処分。当時のことを思い出すだけで笑えてくる。
雅は進学校のストレスから荒れていた。箒の柄の部分で天井を突き刺し穴を開けたり
壁を殴っては嗤っていた。そんな雅を支えていた舞子さんが雅に愛想を尽かし、雅は失恋を知ることとなる。
雅からの相談を受けて、俺はすぐさま原付を走らせ駆けつけた。
木津川が流れる河川敷で、雅は彼女から貰ったレター類と指輪を持ってきた。
「覚悟はいいか?」俺が雅に問う。「おう。」雅の表情は哀しげだった。
俺と雅は数多あるラブレターをジッポのライターで燃やした。
全て全て燃やした。「どう?」「なんか…すげえスッキリした。ありがとう。怜也。」「いいってことよ」
指輪を見つめる雅。「どうすんの?それ。川にでも投げ込むか?」怜也が問いかける。
しばらく沈黙した雅は「いや…これは取っておくよ。」「そうか…わかった。」
そのあとは二人で煙草に火をつけて一服した。
落ち着いたあとは雅のマンションで一夜を共にした。
近所にあるTSUTAYAで借りたグロテスクホラーDVDを見ながら爆笑していた。
楽しかった。これぞ青春なんだな。思春期だ。楽しい。
―――山成は田辺高校に通っていて当初は楽しそうにしていたが、荒れ狂い。終いには退学していた。
そこからの話はとにかく原付で暴走して夜を楽しんでいた。
悪ガキ上等。そんな山成に対し、怜也少年は羨ましい願望の対象人物だった。
山成に中学時代貸したゲームソフトは未だ返ってきていない(苦笑)
我が家の本家から譲り受けた日本刀の模擬刀も還ってきていない。これは危ない。警察に捕まるぞ(笑)
―――篠崎は奈良の生駒にある高校へと通っていた。
どうも、京都の連中が気に食わないそうだった。
篠崎は知らない間にギターを始めて、バンドを結成していた。
俺はただただ羨ましかった。
―――鈴森は同じ京都にある私立高校の南京都高校でただ自堕落な毎日を過ごし、だるさしか感じていなかった。
鈴森は小学校の時から脱走癖があり、全てを投げ出す究極のめんどくさがり屋だ。
俺とは腐れ縁でとにかく真面目な人間を馬鹿にして嗤っていた。
5、6年の時の担任からもよく怒られたっけな。懐かしい。
ドラムは…やる気ないみたいだ。
―――大樹は雅と同じ高校に通っていた。とにかくだるい毎日を大樹なりにエンジョイしてたみたいだ。
大樹も同じ小学校に通うチビだがおもしろくて気の良いやつで何より音楽が大好きなやつだった。
ゲームの話をするのも大好きでとにかく幼少時代から笑い合っていた。
そんな大樹も荒れる雅を支える一人だった。
楽器はドラムを始めると言っていて電子ドラムを買ってもらっていたが、結局やらず終いで辞めてしまっていた。
―――怜也。俺は自分の高校に通うのも嫌になっていた。
――そう思った時だった。奴ら…黒い影、またの名を死神が俺の前に現れた。初めて言葉を発した。「オムカエニキマシタ」
「…なんて?」その後は只ひたすら同じ言葉を発する。
「オムカエニキマシタ。オムカエニキマシタ。オムカエニキマシタ。オムカエニ…」
夕暮れ時にも拘らず奴らは現れた。俺は必至になって逃げた。怖すぎた。まだ俺には早すぎる。
耐えるしかない。全ては高校を無事、卒業するために。
次の日に学校に行ったがダメだった。俺は遂に学校で倒れてしまった。救急車が鳴る。過呼吸が止まらない。
次に気が付いたときは車いすに乗せられ精神病院に初めて入院することとなった。医療保護入院だった。
それからは苦痛の毎日だった。誰かが日夜関係無く泣き叫び、そこら中から漂う糞尿の匂い。まるで阿鼻叫喚の地獄絵図だ。
観察室は最悪だ。異様な匂いと不気味な明るさ。トイレがすぐ傍にある為、水辺に霊は寄ってくる。
夜中、お腹の上に異様な重みを感じた。「誰かが乗ってる…」お婆さんの霊がこちらを微笑みながら乗っている。
何か言いたげだが話さない。しんどかったがどいてと言うわけにもいかず一夜を過ごした。
毎日、「退院させてくれ!」と電話ボックスで泣き叫んだ。医療保護のため、そういう訳にもいかない。
辛かった…ただ、毎日が辛かった。当時の担当看護師は木田淳人さんというイケメン看護師だった。
切れ目に左右非対称のツンツンヘアー。イケイケ看護師だった。将棋も強かった。昔、親父に駒の動かし方を教えてもらって以来だったから
私はまだまだ弱かった。そこから将棋にハマった。おじいちゃんに声を掛けて将棋を指せる人を探した。
松井さんという病院に住んでるおじいちゃんが師匠だ。いつも将棋の指し方を優しく教えてくれた。
将棋が大好きになった。そこからは心穏やかな生活を過ごした。3ヵ月の期間を要したが無事、一回目の退院をした。
もう二度と戻ってくることはない。そう誓って五条山病院をあとにしたのだった―――――
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