第17話
家に帰る、父さんとの模擬戦が始まる
ほとんど毎日やっているのだが今まで一撃も入れた事がない
今日何度目かもわからないが勝つつもりで全力でやる
「今度こそ、勝っつ‼︎」
「来いっ」
気合いを入れて
クラウチングスタートをする寸前
体が倒れ込み、駆け込むその刹那に「縮地」を使い地面を滑るように移動する
間合いに父さんが入ったその時走り出す様に体を上げると同時に天を裂くように剣を振る
渾身の一撃は簡単に剣で防がれるが
体に残った勢いをそのままに
父さんに接近して「スタンプパンチ」を打つ
まともに当ててもこっちの拳を痛めるだけだが、父さんの重心を衝撃で上げると同時に手から剣を離し、両手で剣を持つ父さんの右手を掴んで背負い投げをする
綺麗に決まった、地面に父さんの体が地面に触れる瞬間
父さんは海老反りになりその反作用で
力を入れて父さんの右手を握っていた両手を軸に体が宙に浮く
そのままブリッジになった姿勢になった父さんは勢いよく体制を戻し
ブンッ、ドタン
剣を振るかのように俺の体を振り落とす
何とか受け身を取るも衝撃を殺し切る事はできず肺から空気が抜ける
「面白い動きだったが決め手にかけるな」
この世界の人間に対して地球の武術は前提とする身体能力が違いすぎて使い物にならないが、それでも父さんの虚を突くことができたのだから良い方だろう
次は何を仕掛けるか考えていると
「ご飯よー、戻ってきてー」
母さんが家から呼びかける
とても聞き取れる距離ではないのだが
この世界の人間は五感も異常に優れているらしい
父さんがそれに返事をした後に
「また、明日だな」
「明日こそ勝たせてもらうよ」
それを聞いた父さんは俺の頭を乱暴に撫でる
家に戻って夕食を食べながら他愛もない話をしていると父さんが
「先生から聞いてるかもしれないが
3周後あたりに森に入る事になるから今まで通り、いやそれ以上に鍛錬するだぞ」
「森に入るの?」
森とは平野にあるこの村から少し離れたところにある動物や魔物が住み着く魔境だ
絶対に近づくなと言われているが同年代の名前も知らない子が入って何かの動物の胃袋から発見されたのは強く印象に残っている
「危なくない?それって大丈夫なの?」
「危ないし大丈夫じゃないが、魔物はもちろんだが動物も危険だって理解する必要があるのと...酷な話、選定だな」
「選定?」
父さんが口篭ったので母さんが
「この時期になればよっぽど才能が無いとかじゃなければ真面目に鍛錬してる子は自分の身を守る事ができるから...
怠慢な、能力のない子を村で養う事はできないから...」
残酷な話だが、こんな世界だから仕方のない事なのか?
地球の文化で考えるとあり得ない事だが郷に入れば郷に従えともいうし...
少なくとも俺はあの5人は大丈夫だろう
それにこのタイミングで教える、警告してくれるということは口減しではないだろう
子供達が努力すれば乗り越えられる事だろう
「わかった、でもそれって話て良いの?」
「話すことになってるのよ、まぁルドの友達はみんな真面目で良い子なんでしょ?大丈夫よ」
俺もそう思う、あんまり接点のない子も決して弱いわけでも不真面目なわけじゃない
なんとかなるだろう
もちろん鍛錬はこれからも真面目に、いやより一層気を引き締めてやっていこう
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