第53話 女帝、二人と相見える
「────リアムくんは、私のリアムくんなの!」
そう言うと、メリアさんはリディアさんと女帝さんの二人に向けて炎魔法を放った……その炎魔法に対してリディアさんとメリアさんはそれぞれ対処すると、リディアさんはメリアさんに斬りかかっていう。
「リアムさんは、あなたのリアムさんではありません!」
風魔法を込めた剣を思い切り振ると、メリアさんと、その正面に居た女帝さんにも風の斬撃が飛ばされる。
メリアさんはそれを自らを風魔法で上に飛ばすことで回避し、女帝さんは氷壁を作ることで防いだ。
そして、その氷壁が強力な風圧とぶつかったことで崩れると、女帝さんが言う。
「面白い……そういうことなら、私も、リアムの女になるのは私だということを、力を持って証明しよう」
そう言うと、女帝さんは左手に持っている氷剣でリディアさんと剣を交え、右手でメリアさんに向けて雷魔法を放った。
という具合に、最初はリディアさんとメリアさんがそれぞれ一対一で女帝さんと戦って力を測るという話だったのが、いつの間にか三人の乱戦状態となっていた。
そして、ある程度時間が経つと、三人は動きを止める。
すると、女帝さんが口を開いて言った。
「リアムと行動を共にしているというだけあって、やはり君たちもとても実力のある者らしい……リアムを除けば、間違いなく今まで私が戦ってきたどの戦士よりも強いだろう」
その言葉を受けたリディアさんが、落ち着いた声色で言う。
「……あなたも、リアムさんに一方的に敗北するのではなく、戦うことができていたというだけあって、わかっていたことですが相当なお力があるようですね」
そのリディアさんの言葉に続けて、メリアさんが言う。
「確かに、リアムくんと戦えて、この私とも良い勝負ができるんだからやっぱり力はあるみたいだね〜」
「見ただけでもある程度わかっていたが、やはりこうして実際に相見えれば、より詳細にその実力がわかるものだな……そして、それは観客席で私の戦いを見ていた君たち二人にとっても、同じ感覚だろう」
さらに続けて、女帝さんは二人に向けて言う。
「私の力もわかってもらえたことだ、次はリアムが私の男になることも────」
「それは却下!」
「そちらは受け入れることができません」
二人同時にそう告げられた女帝さんは少し驚いた表情をしていたけど、ひとまず三人が戦って互いの力を認め合ったところで、僕たちは闘技場を出た。
「これからどこに向かうんだ?」
「わかってたけど、やっぱり女帝ちゃんもついてくるの?」
「私の男についていくのは当然だろう」
「あなたの男性ではありません」
「……」
「……」
「……」
三人の間でどこか殺伐とした空気が流れていたけど、僕はそんな空気を払拭するように言う。
「と、とりあえず、今日はみんな体を動かして疲れてると思うので、宿に向かって早いところ休息を取りましょう!」
「リアムさんがそう仰るのであれば従います」
「うん、私もそれでいいよ〜」
リディアさんとメリアさんがそう言ってくれると、続けて女帝さんが言った。
「無論、私も異論は無いが、宿泊するということなら宿ではなく私の城に来たらどうだ?」
「え……?お、お城!?」
「あぁ、部屋も空いているし、この人数を宿泊させるぐらいなら何の負担にもならない」
「そ、それは……ありがたいんですけど、お城っていう場所だと、緊張してしまって夜眠ることができるかどうか心配です……」
僕がそんな心配を吐露すると、女帝さんが僕との距離を縮めて言った。
「安心しろ、君が眠れないというのなら、私が隣で添い寝でもして君を眠りにつかせてやろう」
「っ……!」
「っ!!」
その女帝さんの言葉をきっかけとして、リディアさんとメリアさんは目を見開くと続けて言った。
「絶対ダメ!」
「私も、それは許容できません」
「ほう、だが、私の男であるリアムの隣で私が眠ることに何の問題が────」
その後、三人は先ほどと似たような言い合いを始めたけど、長くなってきたところで僕がその会話に割って入ると、三人とも素直に聞いてくれて、僕たちはひとまず宿に向かうことにした。
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