第50話 リアム、女帝と戦う

◆◇◆

「────つまり、リアムさんにクエストを達成させて、リアムさんのお力でAランク冒険者になり、クエスト報酬などはほとんど自分たちのみで占有、もう金銭に困らなくなったところで、優しいリアムさんとあなた方では当然性格が合うはずもないためそのリアムさんを追放した、ということですね」

「で、長い帽子を被って、顔も覆ってる怪しげなマスクを付けてる、タキシードを着たおそらくは魔族の男にお金を条件としてエルフの国の巨大樹を破壊するよう言われて、エルフの国が滅びたらお金だけじゃなくて、魔族の英雄になれて、私への復讐にもなるから引き受けたってこと?」


 リディアとメリアが引き出した情報をまとめて口にすると、ラッドが慌てた様子で言った。


「あ、あぁ!そうだ!そうだよな!?ベラ!」

「う、うん!それで全部!」

「……なるほど」

「……なるほどね」


 リディアとメリアが同時にそう言うと、納得した二人の様子を見て安堵した様子のラッドは、その二人に向けて機嫌を窺うような声色で言った。


「な、なぁ、もう全部正直に話したし許してくれよ!これ以上俺たちに何かしたって、何も出ねえぜ?」

「確かに」

「そうですね」

「だ、だったら────」


 ベラが明るい表情になって口を開いて言葉を発した瞬間、リディアは剣を抜いて凄まじい気迫を放ち、メリアは凄まじい魔力によって魔法を展開し始めて言った。


「だからって、君たちがしたことを考えたら許せるわけないよね?」

「なっ!?」

「お優しく純粋なリアムさんに代わり、私があなたたちのことを斬って差し上げましょう」

「ま、待って────ああああああああっ!!」

「うわあああああああっ!!」


 その後、リディアとメリアは、リアムのされたことに対する怒り、そしてエルフの国を滅ぼうとされたことへの怒り。

 その二つの怒りによって、もう二度とそんなことをする気が起きないように、容赦無くベラとラッドの二人に攻撃を加えた。

 そして、二人が気を失ったところで、リディアとメリアの二人は急いで観客席に向かいながら話す。


「もう女帝ちゃんとあいつらのリーダーの戦い終わったと思うけど、まだ試合開始の合図の雷魔法って聞こえてないよね?」

「はい、聞こえていません」

「だよね!ていうか、私も雷魔法感じてないからまだのはず!あ〜!もしリアムくんの戦いを一秒でも見逃しちゃったら最悪〜!!」

「同感です」


 そんなことを言いながら、二人が観客席に戻って闘技場中央へ目を移すと────そこでは、リアムと女帝が向かい合って、まさに今から戦いを始めようとしていた。


「間に合った、ようですね」

「だね〜!リアムく〜ん!カッコいいよ〜!」


 その声は歓声に紛れて聞こえないが、メリアはそれで十分だった。

 そして、隣でそんなことをしているメリアのことを見て、リディアもリアムへの気持ちを大きな声で発したかった……が。


「……リアムさん、素敵です、頑張ってください」


 リディアは、人の大勢居る場所で大声を出すような性格では無かったため、リアムに向けて小さな声でそう呟いた。

 そして、二人がリアムへの想いを伝えたところで────リアムと女帝の間に雷魔法が落とされ、二人の戦いが始まった。



◆◇◆

 女帝さんは先ほどのゼインさんの時と同じように、左手に氷剣、右手から雷魔法を発していた。


「君が相手だ、早速こちらから仕掛けさせてもらおう」


 そう言うと、女帝さんはとても強力な雷魔法を僕の方に放ってきた。

 僕は、その雷の方向を風魔法で逸らすと、女帝さんに向けて炎魔法を放つ。

 すると、女帝さんは氷壁を作ってその炎魔法を防いだ……けど、その僕の炎魔法は氷壁を貫通して女帝さんの方に向かう。


「っ……!」


 女帝さんは驚いた表情をすると、右手から氷魔法を放って、その炎魔法にぶつけてそれを防いだ……氷壁や氷魔法が炎魔法とぶつかったことで、闘技場中央は一瞬だけ霧のような状態になったけど、女帝さんはその霧を風魔法で大胆に吹き飛ばして言った。


「私の氷壁を壊すだけでなく貫通してくる、か……ふふ、やはり君は、私がずっと待ち望んでいた男のようだ……だが、これで終わりはないだろう?もっと、君の力をこの私に見せてくれ、リアム」

「はい!!」


 それから、僕と女帝さんはさらに力を出し合って、戦いを激化させていった。

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