第48話 リディアとメリア、容赦しない

◆◇◆

 そこからは一方的で、女帝さんは為す術の無いゼインさんに雷魔法を放ち続けた……ゼインさんの取っておきだったらしい魔族を弱体化させる液体が女帝さんに効かなかったから、こうなってしまうのも仕方ないのかもしれない。

 それに……さっき、今までの戦士の人たちに対して、ゼインさんが侮辱する発言をしたことを、女帝さんはかなり怒っているみたいだ。


「わかってたことですけど……女帝さんは、本当に強いお方なんですね」


 今は必要が無いからか雷魔法しか放っていないけど、そのもう片方の手には氷剣を握っているから、もし近接戦闘になったらあの氷剣で対処できるんだろう。

 次に女帝さんと戦う身の僕としては、どうすれば女帝さんに勝利できるのかを考え────あれ?


「リディアさん……?メリアさん……?」


 僕の言葉に対して何の反応も無かったため、僕が右隣と左隣を交互に見てみると、そこにあるはずのリディアさんとメリアさんの姿が無かった。


「ど、どこに行ったんだろう……魔法で誰かに攻撃されたような反応は感じなかったら、ちょっと席を外してるだけかな?」


 ……ここで僕が二人のことを探しに行って、二重ではぐれてしまうような事態になるのは避けたかったため、僕は少し不安がありながらもここで女帝さんとゼインさんの戦いを見ながら、二人が戻って来るのを待っておくことにした。



◆◇◆

「お、おいおいおいおい!ベラ!ゼインのやつやばくねえか!?」

「わ、私に言わないでよ!ゼインが任せろって言ったんだから!」


 ゼインと女帝の戦いを、戦士入場口へと続く廊下から見ていたベラとラッドの二人は、ゼインが女帝に圧倒されているのを見て、顔に焦りを浮かばせてそんなことを話していた。


「でも、あの液体が効かなかったんだぜ?だったら、どうやってゼインがあの女帝に勝てるんだよ!?」

「だから!私に聞かないでって言って────」

「そもそも、最初からあんな奴が女帝ちゃんに勝てるわけないでしょ」

「っ!?」


 ベラの言葉に被せるようにして、一人の女性がそう言うと、ベラとラッドは慌ててその声の方に振り向いた。

 すると────そこには、リディアとメリアが居た。


「お前ら……!アストリアと、大魔法使い!!」

「わ、私たちに何の用!?」


 ベラとラッドが身構えてそう言うと、メリアが明るい声色で言った。


「そう身構えないでよ、私たちはただ楽しく談笑しに来ただけ────なわけないよね」


 最後の部分を暗い声色に変えて言うと、メリアに続けてリディアが口を開いて言う。


「あなた方は、力量不足などという嘘の理由でリアムさんのことをパーティーから追放し、自らの欲だけのためにエルフの国を滅ぼそうとしましたね」

「そ、それは……そ、そうだ!俺たちは、マスクを付けてるやつにやれって言われたから、仕方なくやったんだ!」

「へぇ?」


 凍るような空気の中、ラッドはあることを思い付いてそれを咄嗟に口にした。


「な、なぁ、あんたたち二人も、リアムのことなんて放って俺らと一緒に来いよ!あんたたち二人なら、あの女帝だって倒せ────ひっ!?」


 ラッドがそう言いかけた時、リディアは剣を抜いてラッドの首元にその剣を突きつけ、メリアはこの廊下の石造りの壁に炎魔法で轟音を響かせる。

 すると、リディアが言った。


「リアムさんのことを侮辱するとは、許し難き狼藉です」

「リディアちゃん、私も同じ気持ちだけど、今の怒りを晴らすのは情報を吐かせてからにしないとダメだよ」

「……わかっています」

「うん……じゃあ────手始めに、あいつと同じ雷魔法を浴びせてあげるね」

「え────うわああああああっ!!」

「ぁああああああっ!!」


 それから、リディアとメリアは、以前決めたように一切容赦することなく、ベラとラッドの二人に、リアムを追放した本当の理由と、エルフの国を滅ぼそうとしたというマスクを付けた人物についての情報を聞き出すことにした。

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