第44話 リアム、女帝と出会う
◆◇◆
長い白髪に、色白で綺麗な肌。
とても綺麗な顔立ちをしていて、黒のドレスを着ていてもわかるほどにスタイルが整っている。
……リディアさんにも威厳を感じる時はあったけど、この人からはまた違った威厳を感じる。
どこか異様な雰囲気の人だ……なんて思っていると、その黒のドレスを着た女性が言った。
「強力な魔力反応二つを感じ、妙な騒ぎが起きていると思い立ち寄ってみたが……どうやら、君たち二人がその原因と見て良いようだな」
そして、黒のドレスを着た女性は二人のことを見てから言う。
「かなりの力を秘めていることはわかった……が、ここは我が国の領地だ、これ以上騒ぎを大きくするのはやめてもらいたい」
「わ、我が国……!?」
僕が突然放たれたその言葉に驚いていると、リディアさんが言った。
「我が国……ということは、もしやあなたがお噂の魔族の国の女帝、ということですか?」
「その通りだ」
リディアさんの疑問に対して、黒のドレスを着た女性は頷く。
────じょ、女帝さん!?
確かに、異様な雰囲気の人だとは思ったけど、まさか女帝さんだったなんて……!
「でも、この周りに居る魔族たちの反応だと、魔族の国での喧騒騒ぎなんて日常茶飯事みたいだし、そんなことでいちいち女帝ちゃんが出て来たのはどうして?」
「女帝……ちゃん?」
呼び慣れない呼び名なのか、女帝さんは一瞬困惑した様子だったが、すぐにその質問に答える。
「確かにこの国では、そういった輩が大勢居る……が、君たち二人ほど強力な魔力を持ったものなど居ない、だから私が直々に止めに来たんだ……あと一つを挙げるとするなら、君たち二人に提案があったからだ」
「提案……?」
メリアさんがそう聞き返すと、女帝さんが言った。
「知っているかもしれないが、私は挑戦者を募り一対一で戦うということをしている……そこで、良ければ君たち二人にも、私と戦って欲しい」
「どうして、わざわざ私たちのことをお誘いになられるのですか?」
「君たちが強者だからだ……最近は、私が一度魔法を放っただけで終わることも多くてな、その点君たちであればそんなことにはならないだろう……君たちが男であれば良かったのだが、せっかく私の目の前に現れてくれた強者に対し贅沢は言ってられない」
最後の言葉の意味はわからなかったけど、そんな言葉を聞いたメリアさんは、二回頷きながら言った。
「うんうん、確かに私だったらそんなことにならないどころか、むしろ倍の魔法を返してあげて女帝ちゃんに勝っちゃうかもしれないけど────そんなに強い人と戦ってみたいなら、とりあえずこのリアムくんと戦ってみてよ」
そう言うと、メリアさんはリディアさんとメリアさんの後ろに立っていた僕のことを、背中を押して女帝さんの前に押し出した。
「なんだ?ただの人間の男では────っ……!?この私が気圧されただと……!?……何者だ?」
何かを言いかけた女帝さんは、突如驚いた様子になるとそう聞いてきた。
……何者?
「リアムと言います」
何を答えれば良いのかわからず名乗ると────
「リアム……」
女帝さんは、僕の名前を小さな声で呟いた。
すると、メリアさんが僕の両肩に手を置いて言う。
「リアムくんは、女帝ちゃんと戦うためにこの魔族の国まで来たの……そうだよね、リアムくん」
「っ!はい!今の僕の力が強いと噂の女帝さんにどのぐらい通用するのか知りたくて、力を磨きたいと思い来ました!」
メリアさんのその言葉に対してはハッキリと答えられる答えがあったため僕がそう答えると、女帝さんが言った。
「そうか……ならば、今日にでも相手をしよう」
「え!?い、良いんですか!?」
「当然だ……私はずっと、この時を待っていたのだからな」
小さく口角を上げると、続けて言う。
「この街中央にある闘技場の観客席で待っていてくれ……本当なら今すぐにでも戦いたいが、先約があってな」
その女帝さんの言葉を聞いたメリアさんは、僕の両肩から手を離して言った。
「先約って、どのぐらいかかるの?」
「先約と言っても、他の場所で用があるわけじゃない……リアムと同じように、人間の男で私と戦いたいという者が居るから、リアムと戦うのはその男の後になるというわけだ……ふふ、人間の男だと侮っていたが、君を見た後ではそんなことも言えそうにない」
どこか柔らかな表情で僕に向けてそう言うと、女帝さんは僕たちに背を向ける。
「今から君たちが闘技場に向かうなら、私とその男の戦いを見ることになるだろう……楽しんで見ていてくれ」
そう言うと、女帝さんはそのままこの場を歩き去ってしまった。
やっぱり、少し不思議な人だけど、悪い人では無さそうだ。
女帝さんに対してそんな感想を抱きながらも、僕たちは女帝さんに言われた通りに、街中央にある闘技場へ向かうことが決まって足を進める。
僕と同じ人間の男性が、女帝さんと戦う……その人は、一体どんな戦い方をする人なんだろう。
足を進めている間、僕はそんなことを考えて、その二人の戦いを見られることをとても楽しみにしていた。
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