第42話 リアム、胸に触れる?
◆◇◆
翌日。
目を覚ました僕がゆっくりと目を開くと────
「えっ……?」
目の前にはリディアさんが居て、さらにその服の第二ボタンまでが外れているせいで、胸元と胸の谷間が薄らと覗かせていた。
「っ……!」
き、昨日寝る前は確かボタンが外れたりしていなかったのに、どうして!?
そんなことを思いながらも、寝起き直後に刺激的なものを至近距離で見てしまった僕は、思わずリディアさんから身を引こうとした────けど。
「っ……!?」
リディアさんは僕のことを抱きしめていて、身を引くことができなかった。
というか、昨日僕はリディアさんに背を向けて眠ったはずなのに、どうしてリディアさんが僕の正面に居るんだ……!?
そんなことを思いながらも、僕が思わず目の前にあるリディアさんの胸元に目を奪われてしまっていると────
「おはようございます、リアムさん」
「っ!リ、リ、リディアさん!お、おはようございます!」
リディアさんが目を開けて僕に挨拶をしてくれたため、僕は慌ててリディアさんの胸元からリディアさんの顔へと視線を移してそう返事をした。
すると、リディアさんが微笑んで言う。
「リアムさん……もしご興味があるのでしたら、私の胸部に触れてみてもよろしいのですよ?」
「……え?」
寝起きのはずのリディアさんから突然放たれた言葉に困惑した────けど、僕はその言葉の意味を理解して、先ほどまでもリディアさんの胸元を見て熱を帯びていた顔を、さらに熱帯びさせて言った。
「も、もしかして……お、起きてたんですか?」
「はい、反対を向いて眠っていたリアムさんに私の方を向いてもらい、服の第二ボタンまでを外せばリアムさんが私のことを女性として意識してくださるでしょうか……と思ったのが三十分前に起床した時で、今に至ります」
「っ……!?」
僕がその言葉に驚いていると、リディアさんが言った。
「このようなことをするかは非常に迷いましたが、今は行って良かったと思っています……何故なら────」
続けて、頬を赤く染めて言う。
「リアムさんが、私の胸部を見て、予想以上に私のことを女性として意識してくださっていたのがその表情や視線、紅潮した頬や雰囲気から伝わり、とても嬉しく思ったからです」
僕が恥ずかしさの頂点に立っているような感覚になっていると、リディアさんはさらに言う。
「リアムさん……もしも私の胸にご興味がお有りでしたら……触れていただいても、よろしいのですよ?」
「え、えっ!?」
「他の男性であれば、そもそも私の体に触れることなど許しませんが……私を救ってくださった、心優しきリアムさんにであれば、私の胸に……いえ、胸だけでなく、どのようなことをされても構いま────」
そこまで言いかけたリディアさんは、一度口元を結ぶと、再度口を開いて頬を赤く染めたまま甘い声色で言った。
「どのようなことでも、していただきたいと、思います……」
「っ……!リ、リディアさん……」
そのリディアさんの言葉に加え、リディアさんの女性としてとても魅力的な胸元が目の前にあって……僕は今、とても心臓の鼓動が激しくなっていた。
……前に決めたんだ。
もう、リディアさんのことを傷付けないためにも、僕はリディアさんと────と思っていると。
ガチャッ、という音が聞こえ、その直後────
「おはよ〜!こんな雪国で一人眠るなんて人肌の温もりが恋しかったよ〜!まぁ、魔法で温度調節してたから寒さは大丈夫だったんだけどね〜!二人はど────って、はぁ!?」
メリアさんが部屋に入ってきたかと思えば、僕たちのことを見てそう大きな声を上げた。
「どうして一緒のベッドで寝てるの!?ていうか、リディアちゃんリアムくんのこと抱きしめ────」
「【疾風斬撃】」
リディアさんは僕のことを抱きしめるのをやめて突如ベッドから起き上がると、剣を抜いて風の斬撃をメリアさんに飛ばした。
だけど、メリアさんはそれを防いで言う。
「危なっ!リディアちゃん!いきなり何するの!?」
「あなたという方は……!いつもいつも!」
「今怒りたいのは私の方なんだけど!私が居ないからってベッドの上でリアムくんのこと抱きしめてるってどういうこと!?」
「あなたに説明する義理はありません!今日という今日こそ決着を着けさせていただきます!」
「こっちのセリフだから!」
そんなやり取りをすると、リディアさんは普段通りに鎧を着た。
そして、メリアさんが部屋の外に出ると、リディアさんもその後を追うように部屋のドアに近付く。
「え、えっ!?お、お二人とも、どうするつもりなんですか!?」
僕が体を起こしてそう聞くと、リディアさんが言った。
「すみません、リアムさん……すぐにあの不届き者を斬り、リアムさんの元まで戻りますので、どうか今しばらくの間ここでお待ちください」
それだけ言い残すと、リディアさんはこの部屋を後にした。
「……」
わざわざ部屋の外に出て戦うなんて……二人の雰囲気からしても、今回は今までの言い合いとかとは違って本気の戦いをするつもりなんだ……!
当然、それをただ見過ごすことなんてできないため、僕はすぐにベッドから降りると、二人の後を追った。
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