第41話 リアム、リディアと添い寝する

「リアムさん、少々お話があるのですが、よろしいでしょうか」


 一度部屋に入ったため、休息を取るべくベッドの上に座ると、リディアさんがどこか力の込められた声でそう聞いてきた。


「は、はい!」


 僕はそんなリディアさんに少し動揺してしまって、言葉を詰まらせながらも返事をすると、リディアさんは「失礼致します」と言って僕の横、つまり同じベッドの上に座った。

 一体どんな話があるんだろうと次のリディアさんの言葉が発されるのに意識を集中させていると、リディアさんが言う。


「先ほど、あの方をお姫様抱っこなるものをしていた時、あの方と体が密着していたかと思われますが、それに対しどのような感情をお持ちですか?」

「え?か、感情、ですか?」

「はい」


 突然少し難しいことを問われて、少し困惑した。

 ……けど、あの時に思っていたことは────


「少し恥ずかしかったですけど、それ以上にメリアさんのことを置いて行ったりはしたくなかったので、その恥ずかしさもどうにか堪えることができました」

「でしたら、あの方が不必要にリアムさんに体を……正確に言うなら、胸部を押し当てられた時などはどう感じましたか?」

「え!?え、えっと……」


 どうしてリディアさんがこんなにも怒涛の勢いでそんなことを聞いてくるのかわからなかったけど、リディアさんに嘘や隠し事はできるだけしたく無いため、聞かれたことにはちゃんと答えることにした。


「どうすれば良いのかわからなくて、困りました」


 正直にそう答えた僕────だったけど、リディアさんはそう答えた僕のことを見て、少し間を空けてから言った。


「……本当に、それだけですか?」

「……え?」


 リディアさんが僕の言葉に対してそう聞き返してくるのは珍しかったため少し驚いていると、リディアさんが言った。


「正直に言うと……私は、あの方に嫉妬してしまいました……リアムさんにお姫様抱っこなるものをしていただいていることや、リアムさんと体を密着させる事ができていること……そして何よりも、それによってリアムさんがあの方のことを女性として意識しているのでは無いかと考えるだけで、私の心中は嫉妬心でたくさんになりました」

「じょ、女性として意識、嫉妬心……」


 僕がそれらの言葉からリディアさんの感情を想像しようとしていると、リディアさんが言った。


「リアムさん、その上で、本日は一つお願いがあるのですがよろしいでしょうか?」

「なんですか……?」


 僕がそう聞き返すと、リディアさんがどこか恥ずかしそうにしながらも、落ち着いた声色で言った。


「よろしければ……本日は、リアムさんに私と添い寝をしていただきたいのです」

「……え?……ええっ!?」


 僕は、そのリディアさんの突然の提案に思わず驚く。

 そ、添い寝!?ぼ、僕とリディアさんが!?


「本日はあの方と私たちは別室なので、それも可能だと思われます……それに、幼子のようなことを言わせていただくのであれば────あの方はリアムさんにお姫様抱っこなるものをしていただいているにも関わらず、私には何も無いと言うのは少々酷な話だと思われるのです」

「な、なるほど……で、でも、アストリア家の騎士のリディアさんが、異性と一緒のベッドで寝たりして大丈夫なんですか?」

「責任といった意味合いで、でしょうか?」

「そうです」


 僕がそのリディアさんの問いに頷くと、リディアさんが小さく口角を上げて言った。


「でしたら問題ありません、リアムさんと初めて会ったあの洞窟で、リアムさんが私の下着姿を見た時からそれは発生していますので」

「えっ!?」


 その言葉に驚いた僕に対して、リディアさんが言った。


「私はここで待っていますので、先にリアムさんがお風呂に入られて来てください」

「っ……!え、えっと、わかりました!」


 そう言うと、僕はベッドから立ち上がって部屋にあるお風呂の方へ向かった。

 ひとまず、体を洗うことでどうにか心を落ち着けてお風呂から上がると、今度はリディアさんがお風呂に入った。

 そのリディアさんのことを待っている間、僕はどうにも落ち着くことができなかったけど、やがてリアムさんがお風呂から上がって来ると────


「お待たせいたしました……リアムさん、本日のところはそろそろ眠ると致しましょう」

「は、はい……!」


 というリディアさんの提案によって、僕とリディアさんは同じベッドの上で横になった。

 ────お風呂上がりのリディアさんがすぐ横に居て、とても良い香りがする……!

 僕は、なんとなく恥ずかしくなってリディアさんの反対方向を向いた────けど、その時。


「ぇっ!?」


 リディアさんに後ろから抱きしめられたかと思えば、それと同時に大きくありながらも、柔らかさと弾力を兼ね備えている二つのものが、僕の背中に当たった。

 こ、これ……もしかして、リディアさんの胸元!?でも、リアムさんは胴体に鎧を────っ!そうだ!眠るときは鎧を外すから……!


「リ、リディアさん……!!」


 僕が小さな声でリディアさんの名前を呼ぶも、リディアさんからの反応が無い。

 もしかして、もう寝てるのかな……?だとしたら、起こすのは流石に申し訳ない……


「……」


 女帝さんとの戦いや、エルフの国を滅ぼうとした人を探し出したりとかで、この先色々と忙しくなるのはわかっていたから早く寝ないといけない……のに、僕はしばらくの間、全然眠る事ができなかった。



◆◇◆

 リアムの返事には答えず、寝たフリをすることでリアムのことを背中から抱きしめ続けているリディアは……

 ────リアムさん、私のことを女性だと意識し照れてくださっているのですね……それに、こうしてリアムさんのことを直接抱きしめられるとは……リアムさん、もっとあなたに、触れさせてください。

 そう心の中で呟くと、リディアはさらにリアムのことを抱きしめる力を強めた。

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