第40話 リアム、魔族の国に入国する
◆◇◆
魔族の国へ向かっていると、雪で覆われた地にやって来たため、僕たちは一度足を止める。
「雪……ということは、そろそろ魔族の国も近付いて来てるんでしょうか?」
「はい、そういうことだと────」
「ここ寒〜い!リアムくん!寒いから、今度は抱っこじゃなくて私のこと抱きしめて〜!」
「えっ!?」
そう言って僕に体を押し当てるように密着させてくるメリアさんに対し、僕がどうすれば良いのかと困っていると、リディアさんが言った。
「いい加減にしなさい!そんなことをせずとも良いための防寒具でしょう!」
「え〜!じゃあ、ただ抱きしめて欲しいから抱きしめてもらうっていうのは────」
「それほど何かに包まれたいと言うのなら、私が今すぐにでも斬り捨て、この雪の地面に包まれると良いでしょう」
「ちょっと、リディアちゃん!?目が本気だよ!?リ、リアムくん!早く移動魔法で進んで!」
「えっ?は、はい!」
よくわからないけど、ひとまず僕は、隣でメリアさんに対して殺意を放っているリディアさんと並走する形でそのまま魔族の国へ向けて移動魔法を使って走った。
すると────石で作られた大きな壁の囲いが見えてきた。
「あれは……」
「魔族の国の見張りと防壁を兼ねている壁、といったところでしょうか」
「ということは、やっぱりあれが魔族の国なんですね!」
「え〜!もう着いちゃったの〜?もうちょっとリアムくんとこうしてたかったのに〜」
そう嘆くメリアさんのことをお姫様抱っこしたまま、魔族の国の門目の前に到着すると、僕はメリアさんのことを僕の腕から下ろした。
「どこか痛いところはありませんか?メリアさん」
「痛いところは無いけど、もうちょっとリアムくんと────」
「そのようなことを言う余裕が無いほどに、私が痛みを感じる箇所を作って差し上げてもよろしいのですよ」
相変わらず、メリアさんに向けて殺気を放っているリディアさんが、僕とメリアさんの間に割って入ってそう言った。
そして、続けて言う。
「本日、あなたは宿で私とリアムさんとは別室です」
「え!?何それ!?」
「あれほどリアムさんと長い間体を密着させ、お姫様抱っこなどというものまでしていただいているのです、そうなるのも当然でしょう……それに────もし本日同室であれば、私があなたの寝首を掻いて何をしてしまうのか、正直私にもわかりません」
「怖〜!でも、まぁ、確かに私も逆の立場だったら私に嫉妬しちゃってるだろうし……少しは仲間のリディアちゃんの意図も汲んであげよっかな〜」
「私は別に嫉妬しているわけではありません!」
そう言って怒っているリディアさんに対して、僕は宥めるように言う。
「ま、まぁまぁ、とりあえず、せっかく魔族の国の前に到着したんですから早いところ入国して、それこそ宿とか探しませんか?」
「……リアムさんがそう仰られるのであれば、私に異論はありません」
「私も〜!」
「ありがとうございます!」
ということで、僕たちは三人で魔族の国の門に近付くと、門番の魔族の人が話しかけて来た。
「一応、誰か一人だけ名前を教えてもらっても良いか?」
そう言われると、リディアさんはすぐに一歩前に出て名乗る。
「リディア・アストリアと申します」
「アストリア……?確か、Sランク冒険者の……あんたらも、女帝様と戦いに来たのかい?」
「はい、そうです」
「そうか……さっきの奴らは大したこと無さそうだったが、これは面白いものが見れそうだな」
そう言った門番の人の言葉を聞いて、僕はふと気になったことを聞いてみた。
「あの、女帝さんは、やっぱりかなり強いんですか?」
そんな僕の問いに対して、門番の人は頷いて言う。
「それはもう強えさ、今まで数え切れねえほどの数のやつが女帝様に挑んだが、結果はほとんどが挑戦者側の惨敗ってほどだからな」
惨敗……わかっていたことだけど、やっぱり女帝さんは強いんだ……!
「他の国とは雰囲気が違うかもしれねえが、楽しんでいってくれ」
「ありがとうございます!」
僕がお礼を伝えると、門番の人は僕たちのことを快く通してくれた。
そして、魔族の国に入国すると、僕は辺りを見渡す。
基本は石造りの建物だったけど、感じる魔力や街全体の雰囲気が、人間の国やエルフの国とは大きく違っていた。
「ここが、魔族の国……色々な魔力を感じますね」
「魔族の中でも、さらに細かくその種族は様々だからね〜」
そのメリアさんの言葉を表すように、辺りを見渡してみても様々な姿形をした魔族の人が居た。
「こういう雰囲気も嫌いじゃ無いけど────ここに居るかもしれないエルフの国を滅ぼそうとした奴だけは、絶対に許さない」
「……そうですね」
力強く言ったメリアさんの言葉に、僕は賛同する。
ゼインさんたちも酷かったけど、それと同じかそれ以上に、あのエルフの国の中央都市マギアトスにモンスターをたくさん出現させた人も酷い。
僕がそう思っていると、メリアさんが切り替えるように明るい声色で言った。
「まぁ、でも!そんなことばっかり考えてても仕方ないし、せっかくの旅だから楽しもっか!」
「っ!はい!」
「では、まずは宿を探しましょうか」
そのリディアさんの提案によって、僕たちは宿を探した。
そして、見つけることができると、事前に二人が話していたように、僕とリディアさんが同じ部屋で、メリアさんは本当に別室となり────宿の部屋に入ると、僕とリディアさんは二人きりになった。
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