第27話 リアム、追放の事実を話す
「巨大樹……改めて近くで見ると本当に大きくて、神秘的な雰囲気を感じます!」
「だよね〜」
「こういった綺麗で神秘的な場所は、リアムさんにピッタリですね」
「そ……そうですか?」
僕たちが各々巨大樹を見上げて感想を抱いていると、早速巨大樹に魔力を与えるべく、僕たちはメリアさんに主導してもらう形で、巨大樹の根元となる中央部分へ向けて歩き出す。
「そういえば、結局さっきのあの三人はリアムくんとどういう関係なの?」
その道中でメリアさんがそう聞いてきて、リディアさんもそれに同調するように頷いて言う。
「そのことは私も気になっておりました……気絶した二人が意識を取り戻したらそのあとで聞こうと思っていたのですが、その前に事が片付いてしまっていたので」
「ただの旅行客の人間と揉めた……とかって感じでもないよね?リアムくんの名前っていうか、リアムくんのこと知ってる感じだったし、リアムくんも相手の男……リアムくん以外の男、加えてあんなやつの名前なんてどうでもよくて忘れちゃったけど、リアムくんも相手の男のこと知ってる感じだったよね?」
仮にも僕のためにという意志でゼインさんたちと戦ってくれた二人がそんな疑問を持つのは当然だし、二人に戦ってもらった以上僕にはそれに答える義務がある。
そのため、僕はメリアさんの問いに対して頷くと言った。
「はい、ゼインさんたちと僕は────元パーティーメンバーです」
「……え?」
「……」
僕がそう伝えた瞬間、メリアさんは足を止めて困惑の声を漏らし、リディアさんは声こそ漏らさなかったけどメリアさんと同様に足を止めて、とても大きく目を見開いていた。
「どうかし────」
「ええええええええ!?あ、あんな奴らがリアムくんと元々同じパーティーだったの!?冗談だよね!?」
「信じ難きことです……リアムさんが元々所属していたパーティーはAランクのパーティーだったのですよね?ですが、あの方達は……」
二人は何か思うところがあるみたいだけど、ひとまず僕は事実だけを伝える。
「冗談じゃないです、僕はついこの間、あのゼインさんたちのパーティーから力量不足だという理由で追放されました」
「つ、追放!?そういえば言ってたけど……え、え!?よりにもよってあんな弱い奴らがリアムくんのことを力量不足っていう理由で追放したの!?」
「そうだと知っていれば、気絶などで済ませず……つい先ほどの自らの甘さを悔いるばかりです」
「私も!リアムくんのこと追放したなんて知ってたら、炎と氷だけじゃなくて風と雷も合わせたのに!!」
「ま、待ってください!僕は別に追放されたことを恨んでるわけじゃ無いんです……僕が力量不足だったのはその通りだと思うので……」
むしろ、そうじゃないとゼインさんが僕のことをパーティーから追放したりするはずがない。
だから、確かにさっきはゼインさんにとても怒ってしまったけど、あれはリディアさんたちのことをバカにされたからで、追放されたことに関しては本当に何の恨みも持っていない。
「リアムさんで力量不足なのであれば、全生物が力量不足ということになります」
「そ、そんな……!さっきだって、もしお二人が来てくれて無かったら、僕が負けていた可能性だって────」
「リアムくんがあんな奴らに負けるなんてあり得ないから!あ〜!リアムくんがあんな奴らに追放されたなんてわかったら、本当にムカついてきたよ」
そう言うと、メリアさんは僕と目線を合わせるように腰を低くして前屈みの体勢になると僕に言った。
「リアムくん、色々と辛かったね……今夜は、私と同じベッドで寝よっか?私がリアムくんのこと慰めてあげ────」
「言うまでもありませんが、それ以上言えば斬ります」
「斬るって、リアムくんのこと慰めてあげようとしてるだけなのに?」
「であれば、その役割は私こそ相応しいのです」
「私は真面目な騎士様にはできないようなあの手この手でリアムくんのこと慰めてあげれるから、私の方が適任だよ」
「私も、リアムさんのためであればどのようなことでも致します」
「へぇ?じゃあ、どんなことまでならできるのか口に出して言ってみてよ」
「っ!あなたという方は────」
その後、巨大樹の根元がある中央部分に歩きながらも、二人は相変わらず言い合っていた。
この調子なら、何事も無く巨大樹が元気になるのも時間の問題だろう。
そもそも僕の魔力で巨大樹が元気になってくれるのかはわからないけど……メリアさんが僕を頼ってくれたんだ……その期待に応えるためにも、絶対に巨大樹を元気にしてみせる!!
◆◇◆
────同じ頃。
ゼインたちが巨大樹の前で、門番には見えない位置に潜んでいると、ある人物が声をかけてきた。
「ゼインさん、ご到着されたようで何より」
そんな声の方を向くと、そこには先ほども話したマスクをしている男性の姿があった……その男性に対してゼインは言う。
「あぁ、後は手筈通り、お前の使役してるモンスター共が警備を倒したら、外からこの巨大樹を壊すと同時に増援のエルフたちの目を集める、でその間に俺たちが巨大樹の根元を壊す、でいいんだな?」
「その通りです……ですが、この巨大樹は結界が無いと言っても外からの攻撃で壊すにはかなりの時間を要するので、ゼインさんたちこそが今回の作戦の主軸となっております……」
「主軸か、はっ、悪くねえ響きだな」
「良い響き〜!」
「俺たちが主軸だぜ〜!」
主軸という言葉に三人が気分を高めていると、マスクをしている男性は「では、よろしくお願いします」とだけ言うとその場から去って行った。
「いっそのこと、このまま俺たちで巨大樹を壊してエルフの国を滅ぼしたら、冒険者なんて辞めてあの魔族どもの英雄になってやっても面白えかもしれねえな」
ゼインがそう呟くと、他の二人もそれに賛同し、三人は警備のエルフに聞こえないように声を抑えながらも笑い声を上げた。
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