第22話 リアム、負けるつもりはない

「ま……っ!ま、待てよ!俺はリアムの仲間があのSランク冒険者のリディア・アストリアだとは知らなかったんだ!だから別に、あんたに喧嘩を売るつもりは────」

「仮にそうだとしても、あなたがリアムさんに暴行を働こうとしたことは変わらず、それだけであなたは私の敵となるのです」

「っ……!クソッ!あんなやつと戦うなんて冗談じゃねえ!ここは退くぞお前ら!!」


 ゼインさんが大きな声でそう言うと、ベラさんたちパーティーメンバーはそれに頷いて、ゼインさんと一緒に走り出した────けど。

 リディアさんは、一瞬でゼインさんたちの前に立ち塞がって騎士の人としてなのか、もしくは純粋に怒っているのかはわからないけど、とにかくとても怖い表情と目で言った。


「私があなた方のことを逃すとお思いですか?」

「この……!」

「ゼ、ゼイン、どうするの?」

「このままじゃやべえって!」

「黙ってろ!今考えてる途中だ!」


 ゼインさんは焦った様子でそう言うと、汗を流しながらいつもよりどこか顔を青白くしていた。


「考える暇など与えるはずがないでしょう……リアムさんに拳を振おうとしたことを一生後悔させてあげましょう」

「……チッ!こうなったら、このリディア・アストリアも相手取ってやるしかねえぞ……相手は二人でこっちは三人だ、戦い方次第でどうとでもなる」

「だ、だよね……!」

「でも、具体的にどうすんだ?」

「お前ら二人はこのリディア・アストリアと戦って時間を稼いでくれ、その間俺がリアムと戦って策を考える……大丈夫だ、Aランク冒険者二人ならSランク冒険者一人でも時間稼ぎぐらいはできるはずだ」

「そ、そうだよね!」

「やってやる……やってやるぜ!」


 ベラさんたちが元気にそう言うと、ゼインさんの青白い表情も少し戻った。

 すると、ベラさんたち二人はリディアさんと向かい合い、ゼインさんは僕と向かい合った。


「リアム……今度こそお前のことを一発殴ってやる!」


 人に攻撃することなんて本当は嫌だけど────


「僕も、ゼインさんに負けるつもりはありません!」


 その後、僕とゼインさんは、互いに距離を縮めて戦い始めた。



◆◇◆

 ゼインのパーティーメンバー二人と向かい合ったリディアは、その二人のことを見て呆れたように溜息を吐く。


「心外ですね……私のことを、あなた方二人で足止め程度ならできるとお考えとは」

「い、言っておくけど!私たちだってAランク冒険者なんだから!」

「そういえば、先ほどの方もそのようなことを仰っていましたが────あなた方、本当にAランク冒険者なのですか?」

「ど、どういう意味だよ」


 動揺した様子でそう言った声に対して、リディアは言う。


「今まで何度かAランクに該当する冒険者の方々を見てきましたが、あなた方よりも数段上の力を持っていたと記憶しています」

「バ、バカにしないでよ!まだ私たちのちゃんとした魔法も受けてないくせになんでそんなことが言えるわけ!?」

「その発言が全てを表しています、ある一定の力量までくればよほど突出していて推測の域を超えている方で無ければ、見るだけでもその力量が窺えるのです」


 リディアは初めてリアムと出会った時、窮地に追いやられていたということもあってその力量を測ることができなかったが、それ以上に────そもそもリアムの力量を測る物差しをリディアが有していなかったため、その力量を一目見ただけでは測ることができなかった。

 物差しで測れるのはあくまで物差しの長さ分だけであり、それ以上の長さを測ることなど誰にもできない。


「そして……その観点から言わせていただけば、あなた方はDランク……いえ、下手をすれば最下層から一つ上のEランク冒険者の方々と同じ力量のように思えます」

「な……!Sランク冒険者だかなんだか知らねえが、舐めるなよ!やるぞベラ!」


 そう言うと、ゼインのパーティーメンバー二人は手に魔力を集中させた。

 そして────


「喰らいやがれ!!」


 そう言うと、二人は同時にリディアに向けて炎魔法を放った。


「全く、どこまでも愚かな……色々とお聞きしたいことはありますが、先に攻撃をしたのはあなた方です……今一度言いますが────覚悟なさい」

「ひっ……!」


 リディアが鋭い眼光で言うと、ゼインのパーティーメンバーの一人が恐怖の声を上げた……が、その時には二人の放った炎魔法はいつの間にか薙ぎ払われており、リディアは二人の背後に回ると瞬時にその二人のことを気絶させた。


「このような者たちに剣を振るってしまうなど……ですが、これもリアムさんのため……リアムさんの方は、どうなっているのでしょうか」



◆◇◆

 ────僕は、僕に殴りかかってきたゼインさんの拳を軽く受け止めながら言う。


「ゼインさん、これは本気の戦いなんですよね?」

「あぁ!?当たり前だろうが!!」

「そうですよね……でも────それなら、どうしてこんなに弱い力で僕に殴りかかってくるんですか?」



 この作品の連載が始まってから、三週間が経過しました!

 三週間の間でここまでお読みいただき、さらにはいいねや☆、作品フォローや応援コメントなどもくださり本当にありがとうございます!

 この第22話までお読みくださったあなたのこの物語への感想などをコメントしていただけるととても嬉しいです!

 今後も応援よろしくお願いします!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る