第20話 リアム、許さない

「魔力じゃない出さないといけないもの……よくわからないんですけど、もしそれを出したらどうなるんですか?」


 そんな疑問を投げかけると、メリアさんが甘い声で言った。


「それはもう、リアムくんが想像もできないぐらい気持ち良くなれると思うよ?ううん、私が気持ち良くしてあげる」

「き、気持ち良く……?」

「うん……でも、このまま話しててもリアムくんのストレスの問題が解決するわけでも、リアムくんが気持ち良くなるわけでもないから、実際にしてみないとね」


 そう言ったメリアさんは、僕の体の上から指をなぞるようにすると、どんどん下の方に指を逸らしていく。


「リアムくんはそのまま横になって、私に体任せてくれたら良いからね」

「は……はい!」


 甘い声でそう言うメリアさんが、一体今からどんなことをしてくれるのかはわからなかったけど、出さないといけないものを出せて、気持ち良くなれるなら────なんて思った瞬間。

 突如大きな物音が聞こえたかと思えば、メリアさんの後ろからリディアさんが姿を現して、メリアさんに剣を振り下ろそうとしていた……それも、【魔貫斬撃】で。

 それに気付いたメリアさんは、すぐに防御魔法を展開しようとした────けど、メリアさんも僕と同じようにリディアさんの攻撃が【魔貫斬撃】であることに気付いたのか、防御魔法を展開するのをやめると自らに風魔法を当ててリディアさんから距離を取った。


「ちょっと!今の防御魔法も破ってくるやつだよね!?もし今私が咄嗟の判断で風魔法にしてなかったら本当に死んでたんだけど!?ていうか、私以外の魔法使いだったら絶対死んでる!」


 そう大きな声で言うメリアさんのことを静かに見た後で、リディアさんは剣をゆっくりと鞘に収めると言った。


「私が眠っているフリを続ければあなたが愚かな行動に出ることはわかっていたので、その愚行によって生まれた隙を突くつもりでしたが……あなたのような方がリアムさんの身に触れていると思うと忍耐ができませんでした、不覚です」

「もう〜!ちょっとえっちなことしようとしただけなのに邪魔しないでよ〜!」

「え、えっちなこと!?」


 僕はそのメリアさんの発言に驚く。

 え、えっちなことって、どういうことだろう……魔力の質を上質に保つためにストレスをできるだけ無くさないといけなくて、そのストレスを無くすために溜まってるものを出して気持ち良く────


「っ!」


 そう考えた末に、僕はようやく今までのメリアさんとリディアさんの会話の意味や、メリアさんが僕に言っていたことの意味などを理解できて、一気に顔が熱を帯びてきた。


「リアム顔真っ赤〜!可愛い〜!」

「っ!ご、ご安心くださいリアムさん!私がリアムさんのことをお支えする以上、あのような輩にリアムさんのことを指一本触れさせはしません!」

「さっき私触れたけどね〜」

「あなたは黙っていなさい!」


 その後もまた口喧嘩をしていた二人だったけど────僕は今までその意図に気付かなかった分、今その全てが凝縮されたような恥ずかしさが込み上げてきていた。

 僕はその恥ずかしさを隠すようにベッドから降りると、部屋の外に向けて走り出して大きな声で言った。


「す、少し一人にしてください!!」

「リ、リアムさん!?お、お待ちくださ────」


 リディアさんが何かを言いかけていたみたいだったけど、僕はそれ以上に今は恥ずかしさがすごかったため、その言葉を振り切って部屋の外に出ると、そのまま走って宿の前に出た。


「ひとまず、一度一人になって落ち着こう……」


 そう決めて深呼吸をした時────


「あぁ?見覚えのある顔があると思ったらリアムじゃねえか」

「え?」


 そんな聞き覚えのある声が聞こえてきたかと思い、その声の方を振り向くと────そこには、僕の元パーティーメンバーであるゼインさんたちが居た。


「ゼ、ゼインさん!?どうしてゼインさんがここに……?」

「でっけえ仕事を任されたからだ……それよりも、お前は一人で寂しそうだな、やっぱりお前みたいなやつのことはどこのパーティーも相手にしてくれねえのか?」

「パーティーでは無いですけど、今後行動を一緒にしてくれるという人ができました」

「はっ、お前の仲間なんて、どうせショボい奴────」


 ゼインさんがそう言った瞬間、僕は思わず体全身から魔力を放つ。

 それによって、ゼインさんたちが嵐でも受けているみたいに腕を前に出してその嵐を防いでいるような素振りを取ったり、植物でできている床に穴が空いていたりしたけど、どうしても魔力を抑えられそうにない。


「あぁ!?な、なんだこの魔力量────」

「僕のことはなんて言っても構いません……ですけど────僕と一緒に居てくれる人のことを悪く言うなら、たとえゼインさんでも許しません」

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