第19話 リアム、教えられる?
◆◇◆
「ク、クソッ、この俺たちがオーク一体如きにこんな目に遭わされるなんてな……どうなってやがる」
オーク一体と戦い、瀕死状態にさせられたところをどうにか逃げ延びて街に帰ってきたゼインは怒りを表すようにそう強く言い放った。
「あれ、絶対ただのオークじゃなくてリーダー系のオークだって、じゃないと私たち三人がオークになんて負けるわけないもん」
「でも、そういう奴って群れで行動してるんだよな?あいつは一体だったぜ?」
「は、はぐれたんだよ!オークの統率力っていうのも大したことないよね〜」
「なるほどな!それなら賛成だぜ!」
仮にもAランク冒険者である自分達がオーク一体に負けたことなど認めることなどできないのか、二人のパーティーメンバーはそう話し合う。
そんな二人に対して、ゼインが言う。
「まぁ、今回は運が無かったってだけだ……それに、俺たちの得意は物理系のやつよりも魔法系の奴だからな、このことで気を落とす必要はねえ」
「そうそう!」
「だよな〜!」
ゼインの言葉に二人のパーティーメンバーは頷く。
そんな会話をして己の心にどうにか安寧をもたらした三人が街を歩いていると、ある一人の女性がゼインに話しかけてきた。
「ねぇゼイン、リアムくんってどこに居るか知ってる?この間のお礼にクッキーあげたいの!」
「リアムならパーティーから追放してやったから知らねえよ、今頃路頭に迷ってんじゃねえか?」
「は、はぁ!?な、何考えてるの!?」
「何がだよ」
「何がって……はぁ、いいや、バイバイ」
あっさりそう言うと、その女性は最後に冷たい表情を向けてゼイン達の元を去って行った。
「今日クエストに出る前もこんなことあったな」
「妬みでしょ?怖〜」
「怖え怖え〜」
そう言いながらも、二人のパーティーメンバーはどこか嬉しそうな声色だ。
そんな二人を見て、ゼインもその二人に呼応するように口角を上げて言う。
「今日は色々とあったが、酒でも引っ掛けて忘れて、またSランク冒険者を目指しながら金でも集めて豪遊するか」
そんなゼインの言葉に賛成する二人と共に酒場へ向かったゼインだったが────
「あれ、リアムくんは?」
「ねぇ、リアムくん知らない?」
「リアムくんにこれ渡したいんだけど……」
幾度となくリアムについて聞かれ、追放したから知らないと答える度に冷たい顔をして去られて行った。
「チッ、どいつもこいつもリアムリアムって、一体何のつもりなんだ?」
「みんなあの間抜けな顔が見たかったんでしょ?それよりゼイン、早く酒場行こうよ〜早く飲みた〜い」
「俺も俺も〜」
「……あぁ、わかってる」
思うところがあったゼインだが、ともかく今は目の前のお酒を飲んで今の感情を全て忘れて楽しむことに決めて、二人と一緒に酒場へ向かった。
そして、酒を飲み酔いが回ってきた頃。
「あなたがゼインさん、ですね?良い話があるのですが、少し聞いていきませんか?」
長い帽子を被り顔を覆っている怪しげなマスクを付けている、タキシードを着たおそらくは男性と思われる人物がゼインにそう話しかけてきた。
「あぁ?人が飲んでる時に話しかけてくるんじゃねえ」
そう言うゼインに、マスクをしている男性はまるで商売人のような口調で言う。
「そう警戒しないでください、その優秀と名高いお噂はかねがね聞いております」
「優秀?はっ、話がわかるじゃねえか」
「はい、そこで一つ、頼まれてはくださいませんか?」
「あぁ?この俺に頼み事をするなら────」
「もちろん、成功の暁には大量の金を渡します」
「ほう?まぁ、内容だけでも聞いてやる」
ゼインがそう言うと、マスクをしている男性は言った。
「実は、エルフの国、もっと言えばその巨大樹が今弱っているのです……そこで────ゼインさんには、エルフの国を滅ぼすべく、力を貸していただきたいのです」
◆◇◆
────何かが触れたような気がしてふと僕が目を覚ますと、僕の横になっているベッドの横には、メリアさんの姿があった。
「メ、メリアさ────」
僕がそう声を上げようとした時、メリアさんは自らの口元に人差し指を立てて小さな声で言う。
「リディアちゃんが起きちゃうかもしれないから、静かにしないとダメだよ」
「あっ……す、すみません」
隣のベッドで横なっているリディアさんのことを見て、そう謝罪する。
そして、続けてメリアさんに言った。
「えっと……メリアさんは、どうして僕のベッドの横に座ってるんですか?」
僕がそう聞くと、メリアさんは妖艶な笑みを浮かべて囁くような声で言う。
「昨日の話、覚えてるかな?魔力とストレスが関係するって話」
「は、はい……一応覚えてます」
「だから、リアムくんの溜まってるもの、今から私が出してあげようと思ったの」
溜まってるもの……昨日も言ってたけど、本当に何の話なんだろう。
「あの、魔力だったら十分余裕がありますし、今魔力を出すと巨大樹に魔力を上げられなくなりませんか?」
溜まってるものというのを魔力と仮定してそう聞いた僕だったけど、メリアさんは小さく笑って言う。
「私が言ってるのは魔力じゃないよ?今から、魔力じゃないリアムくんの出さないといけないもの、私が教えてあげながらちゃんと出してあげるね」
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