第18話 リアム、溜まってる?

「エルフの国のことで僕に協力して欲しいこと……ですか?」

「うん」


 メリアさんが何か困っていることがあって、僕にも協力できることがあるなら喜んで協力したいけど……


「その協力して欲しいことというのは、一体どんなことなんですか?」


 僕がそう聞くと、メリアさんはその説明を始めた。


「実は、このエルフの国の中枢とも言える巨大樹が今魔力不足でね?巨大樹は魔力を生命力に変換して成り立ってるんだけど、今はその魔力が不足してるから、このまま行けばエルフの国全ての植物に根を張ってる巨大樹が無くなって、最悪の場合エルフの国が無くなっちゃうの」

「エ、エルフの国が無くなる!?」


 僕は、思っている以上に大きな話にとても驚く。

 エルフの国と言ったら、世界で見てもかなり古くからある国だ……そんな国が無くなるなんてなったら、その影響はエルフの国だけじゃなくて世界全体にも影響しかねない。


「今すぐってわけじゃないんだけど、その予兆は出始めてる……ほら、リアムくんが治してくれた転移魔法陣があったでしょ?あれも植物と同じで巨大樹の魔力から出来てるんだけど、それが各地で機能しなくなることが多発してるの……理由はもちろん、さっきも言った通り巨大樹の魔力不足からだね」

「なるほど……転移魔法陣が使えなくなってしまったのは、あの一回だけじゃなかったんですね……でも、僕は一体どういう形で協力すれば良いんでしょうか?」

「簡単に言ったら、リアムくんにも巨大樹に魔力を与えるのを手伝って欲しいの」

「え、え!?」


 ぼ、僕の魔力を、エルフの国のあの巨大樹に!?


「普通の魔力だったらほとんど意味無いんだけど、リアムくんぐらい上質な魔力だったらきっと効果あると思うんだよね」

「ま、待ってください!僕の魔力なんて大したこと────」

「ううん、リアムくんの魔力の質は本当に良いよ?転移魔法陣を1秒で治しちゃうなんて、私でも驚いちゃったぐらいだからね……リアムくん、この話、受けてくれないかな?」


 ……僕なんかの魔力であの巨大樹に影響を与えられるなんて思えないけど────メリアさんが真剣なことは、本当に伝わってくる。

 そして……真剣にお願いしてくれているのに、それを自信の無さを理由に断ることなんてできない!


「わかりました……僕で良ければ、その話をお受けします」

「本当!?ありがとう!リアムくん!」


 そう言うと、メリアさんはとても嬉しそうな表情をした。

 ……メリアさんは一見軽そうな感じの人に見えるけど、少なくともこのエルフの国に対してはとても大きな思いを抱いているみたいだ。


「そうだ、リアムくん!魔力の質と心理状態は大きく関係するっていう話もあるから、できるだけリアムくんにはストレスが無いと嬉しいんだけど、今何かストレスに感じてることとか無い?」

「ストレス……ですか?特に無いので、それは大丈夫だと思います!」


 そう言った僕だったけど────メリアさんは、そんな僕に近づいてくると、僕の体を指で上から下になぞるようにして言った。


「本当かなぁ?リアムくんも男の子で、リディアちゃんと一緒に居たらなかなかできなくて溜まってるものもあるんじゃない?」

「溜まってるもの……?」

「うん……リアムくんが望むなら、私が今夜その溜まってるもの────」


 メリアさんがそう言いかけた時、リディアさんが突然僕たちの間に割って入ったかと思えば、とても冷たい声色で言った。


「話が終わったのであれば、今すぐその下世話な口を閉じこの場を去りなさい」

「下世話って、リアムくんだって男の子なんだから溜まっちゃうものが溜まっちゃうのは仕方な────」

「リアムさんが旅を始められてから、まだ二日しか経っておりませんのでそのような心配は不要でしょう……それに、仮にそういったことが必要だとしても、その時はあなたでなく私がリアムさんの介抱致します」

「あ……あの、お二人とも一体何の話を────」

「介抱って、真面目な騎士様がリアムくんのこと満足させてあげられるとは思えないけどね〜」

「あなたよりも私の方がリアムさんのことをわかっているのですから、私の方がリアムさんのことをご満足させて差し上げられます」

「でも────」


 その後、二人はずっと何かを話していたけど、旅とか介抱とか、僕には一体何の話をしているのか全然わからなくて、今日も色々とあって眠気が襲ってきていたから、今日は少し早いけど一人宿のベッドで眠ることにした。

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