第16話 リアム、あ〜んできる?
ご飯を食べるお店に到着した僕とリディアさん、赤髪のエルフの女性は三角形を描く形でそれぞれ席に着くと、料理を注文した。
「……そういえば、大魔法使い様の名前はなんて言うんですか?」
料理が届くまでの間の時間で、僕はあれだけ会話をして、今同じ食事の席に着いているのに名前も知らないというのは少し違和感があったためそう聞いた。
すると、赤髪の女性は小さく微笑んで言う。
「エスメリアって言うの……リアムくんなら、私のことメリアって呼んでくれてもいいよ?」
僕なら……?
どうして僕なら良いのかわからないけど、そういった話をしてくるってことはおそらくエスメリアさんは僕にメリアさんという名前で呼んで欲しいんだろうと判断したため、僕は頷いて言う。
「わかりました、メリアさんですね」
「っ……!リアムくんに名前呼ばれると、ドキッとしちゃうね」
「ど、どうしてですか!?」
僕がそう驚くと、メリアさんは小さく笑った。
すると、今度はリディアさんが口を開いて言う。
「それにしても、先ほどのリアムさんには本当に驚かされました……力を弱めたと言っても、私たち二人の本気の攻撃をお一人の防御魔法で受け止めてしまうとは」
「で、ですから、それはお二人の急速的な魔力コントロールのおかげですよ!」
どうにか僕ではなくお二人がすごいんだということを伝えようとしている僕だけど、そこにメリアさんも会話に入ってきて言った。
「ううん、リアムくんの魔力がすごいからだよ?Sランク冒険者二人の攻撃を受けても無傷なんて……はぁ、本当惚れ惚れする魔力だよね」
「そ、そんなことは無いんです!」
頬を赤く染めてそう呟くメリアさんに、僕は首を横に振ってしっかりと否定する……僕がここまでしっかり否定しているのは、今後力量を読み間違えたりして大変なことになってしまうかもしれないからだ。
そうならないために僕が強く否定するも、メリアさんは口を開いて言った。
「そんなことあるよ?本当、どれだけ硬い防御魔法貼ったらそんなことができるんだろ……もしかして、リアムくん見かけによらずあっちも硬────」
「その続きの品の無い言葉をリアムさんの前で、それも食事の場で吐くのなら、私は即座にあなたの首を刎ねます」
「く、首を刎ねる!?」
どうして突然リディアさんがそんなことを言い出したのか、僕はわからなかったけど、メリアさんはそんなリディアさんの言葉に対して言う。
「私は食事の場でそんな物騒な言葉を使う方が良く無いと思うけど?」
「それはあなたが────」
「ご注文の品をお届けさせていただきます」
二人の話が激化しそうになったところで、お店の人が僕たちの席まで料理を持ってきてくれたため、リディアさんとメリアさんは一度話を中断した。
すると、お店の人たちは僕たち三人分の料理をそれぞれ置いてくれる。
「また何かございましたら、いつでもお申し付けくださいませ……失礼致します」
そう言うと、お店の人は僕たちの前から去って行った。
お店の人たちが去って行った後でまた話が激化したらどうしようと思ったけど────
「美味しそう〜!やっぱり、美味しそうな料理が目の前に出されると気分上がるよね〜!」
「……良質な食材が使われているようですね、とても楽しい食事となりそうです」
どうやら僕のそんな心配は杞憂だったようで、とても安心した。
それから、僕たちがそれぞれ料理を食べ始めると────その途中で、メリアさんが言った。
「リアムくん、これすごく美味しいから良かったら食べてみない?」
「い、いただいても良いんですか?」
「うん!」
「そういうことなら……いただきま────」
「はい、あ〜ん」
僕がそう言いかけた時、メリアさんはお肉を挟んだフォークを僕の口元に差し出してきてそんな声を出した。
「……え!?えっと……お肉、食べても良いんですよね?」
「うん、いいよ?私が食べさせてあげる!ほら、あ〜ん、できる?」
「えっ……と……」
どうすべきなのか迷っていると、メリアさんが大きな声で言った。
「もう!男の子なんだからちゃんとお肉も食べないと!ほら、お口開けて!」
「ちょ、ちょっと待ってくださ────」
「リアムさんが困っているではありませんか!そのようなことはやめなさい!」
「え〜?リアムくんは照れてるだけだよ〜」
「いいえ、あなたの愚かな行動に困られているのです……わかったらその行為をやめなさい」
「わからないからや〜めない」
「っ……!」
その後、僕たちはどうにか三人で無事にご飯を食べ終えたけど、二人の話し合いは激化するばかりで全然仲良くなるような気配は無かった。
そして、お店から出ると、リディアさんは僕の腕を軽く掴み、メリアさんでは追いつけないほどのスピードで移動すると、僕たちの泊まっていた宿まで僕のことを連れてきて、そのまま二人で部屋の中に入った。
────すると、リディアさんは何かを言いたげな目で僕のことを見てきた。
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