第15話 リアム、無自覚に無傷
その直後、二人の斬撃と攻撃魔法によってこの場所にはとても大きな煙ができる。
そんな中、僕の方に向けて走ってくる足音が聞こえてくる。
「ちょっとリアムくん!大丈夫?」
「リアムさん!ご無事ですか!?」
「あぁ、もう!煙邪魔!」
赤髪のエルフの女性のそんな声が聞こえた直後、この場を支配していた煙は瞬時に消え去った。
そして、それにより互いのことを視認できるようになって、すぐに僕のところに駆けつけてくれて再度心配の声を掛けてくれたリディアさんと赤髪のエルフの女性が足を止めると────僕は、元気に伝える。
「はい!大丈夫です!お二人のおかげで無傷で済みました!」
僕がそう伝えると、リディアさんは驚いた様子で言った。
「む、無傷……!?リアムさんは、私たち二人の攻撃を同時にお受けになられたのでは無かったのですか……?」
「はい、そうです!もちろん防御魔法も使いましたけど、何よりもお二人が直前で僕に気付いて力を弱めてくれたおかげです!!」
「力……確かにリアムさんが居るとわかり、瞬時に力を弱めましたが、仮にも全力の技を無傷で……流石はリアムさ────」
リディアさんが何かを言いかけた時、赤髪のエルフの女性はその言葉を遮るように、もしくはそもそも耳に入っていないのか、僕との距離を縮めて僕の目を見ながら言った。
「流石リアムくんだね、私も一応直前で魔力を弱めはしたけど、あれを無傷で受けちゃうなんて」
「そ、そんな……!お二人が瞬時に行ってくれた魔力コントロールのおかげです」
僕がそう言うと、赤髪のエルフの女性は僕と身長を合わせるために前屈みの姿勢になって言った。
「ううん、それだけじゃないよ……こんなにすごいことをしてくれたリアムくんには、何かご褒美あげたいなぁ」
「ご……ご褒美、ですか?」
僕がそう聞き返すと、赤髪のエルフの女性は頷くと同時に胸を揺らすとどこか甘い声色で言った。
「うん、ご褒美……私にあげられるものならどんなものでもあげるけど、リアムくんは私にどんなことして欲しい?」
「え!?え、えっと……」
僕は、赤髪のエルフの女性の目から逃れるように視線を逸らすと、その視線の先には前屈みになっていることで強調されている赤髪のエルフの女性の大きな胸があって、僕は思わずドキッとしてしまう。
「……どんなことでも良いんだよ?……例えば────」
「リアムさんには私が居るので、あなたからのご褒美など不要です」
今度は、リディアさんが赤髪のエルフの女性の言葉を遮ってそう言うと、二人は向かい合った。
「そういえば、リアムくんがすごくて忘れちゃってたけど、まだ私たちの決着は着いて無かったよね」
「えぇ、リアムさんの素晴らしいお力を拝見できたのは何よりでしたが……改めて、ここでしっかりとあなたのことを完敗させて差し上げましょう」
僕は、今にもまた攻撃を放ち合いそうな二人のことを見て焦燥感を抱き、慌ててその二人に向けて言う。
「ま、待ってください!これ以上お二人が闘ったらこの訓練場どころか魔法学校すら危ういそうなので、今日は一度このぐらいにしませんか?」
「なるほど……闘うことに夢中になってしまっていましたが、リアムさんの仰る通り本日はこれまでにした方がよろしいかもしれないですね」
今日闘うのをやめてくれるつもりなのは良かったけど、本日はっていうことはまた後日闘うつもりなのかな……そうなったら根本的な解決にはならないし────そうだ!
「親睦の意味も込めて、これから三人でご飯を食べに行きませんか?」
「リアムくんとご飯!?私行く〜!」
「リアムさんがそう仰るのであれば、当然私もお供致します」
良かった……これで、二人が仲良くなってくれるかもしれない。
そう思ってご飯を食べにお店に向かった時、僕はふとゼインさんたちとご飯を食べに行った時のことを思い出した。
……ゼインさんたち、今どうしてるのかな。
◆◇◆
昨日の夜、酒場で飲み明かしたゼインたち三人は、翌日の昼頃冒険者ギルドに顔を出す。
「さてと、何か手軽なクエストでもやっていくか」
そう言ってクエストボードの前までやって来たゼインのところに、三人の女性が現れてそのうちの一人が話しかけてくる。
「ゼイン、リアム君に伝えてもらいたいことがあるんだけどいい?」
「あぁ?」
そう話しかけられて少し不機嫌な声を出すゼインに、その女性は詳細を話す。
「本当は直接伝えられたら良かったんだけど、今日は居ないみたいだから……この間、クエスト帰りに無償で私に回復魔────」
「リアムならパーティーから追放したから、俺に言われたって伝えようがねえな」
「えっ!?」
そのゼインの言葉を聞いた女性三人は顔を引き攣らせる。
そして、そのうちの一人がゼインに聞く。
「リ、リアム君を追放したって、どうして?」
「どうもこうも、邪魔だったからってだけだ」
「ゼインのパーティーなんて、リアム君のおかげでクエストも評判も維持されてたみたいなものなのに……」
女性の一人がゼインには聞こえない声でそう呟いた。
そして────
「リアム君が居ないならいいや、じゃあね」
冷たくそう言い放つと、三人の女性は去って行った。
「なんだ?あいつら」
「最近私たちが調子良いから妬んでるだけでしょ?ほっとけば?」
「賛成〜」
「そうだな……あの間抜けが居なくなった以上、前みたいに適当にクエストを選ぶことはできなくなったが────」
そう言ってクエストボードに目を移したゼインは、目を滑らせていくと、あるクエストを見て滑らせていた目を止め、口角を上げる。
「オークか、実際はあの間抜けに戦わせてたからどの程度かはわかんねえが、あの間抜けが一瞬で倒してたぐらいだし、俺ら三人で戦えば余裕だろ」
「余裕余裕〜」
「楽勝楽勝〜」
「よし、じゃあこれで行くか……こりゃ、俺らがSランク冒険者になる日も遠くないかもな」
そう言って、ゼインたち三人は冒険者ギルド内に響く高笑いを上げた。
────その後、オーク一体に敗北し、瀕死状態になることも知らずに。
◇
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この二週間の間にこの物語をここまでお読みくださり、いつもいいねや☆、作品フォローや応援コメントなどもしてくださり本当にありがとうございます!
もしここまでお読みくださっている方の中で、まだそれらのことをしたことが無いという方は、この二週間という機会にいいねや☆、作品フォローや応援コメントなどをしていただけると本当に嬉しいです!
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◇
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