第13話 リアム、決闘の合図をする

「決闘……?私と君が?」

「えぇ、もし私が勝てば、今後一切リアムさんに関わらないと誓いなさい」

「え、え!?リディアさん、僕は別に────」

「リアムさんはお静かに願います」


 リディアさんは、騎士の家系でSランク冒険者の人という威厳を感じる鋭い眼光で僕のことを見て来てそう言った。

 とてもじゃないけど、僕では怒っているリディアさんに太刀打ちなんてできるはずもなく、僕はリディアさんに言われた通りに口を閉ざす。


「私が負けたらリアムくんと関われないなんて条件なら、私が君に勝った時はそれ相応のものがもらえるんだよね?」

「私があなたのような軽薄な方に敗北するなどということは起き得ないので、考慮する必要もないでしょうが、そうなった場合は今後私はあなたがリアムさんに関わろうとしてきても今回のように妨害しないことを誓いましょう」

「君に勝ってもそれだけなら────」


 赤髪のエルフの女性は、そう言いかけた時、一度口を閉ざすと少し間を空けてから再度口を開いて言った。


「君の持ってる剣の柄にある紋章、もしかして有名な騎士の家系の?」

「この家紋を知っているとは、少しだけ見直しました……この紋章は、誇り高き騎士の家系であるアストリア家の家紋であり、私はそのアストリア家のリディア・アストリアです」

「リディア・アストリア……確か、私と同じSランク冒険者だったよね?」

「あなたと同じなどと言われるのは心外ですが、あなたが大魔法使いと呼ばれるSランク冒険者なのであれば形式上はそうなるのでしょう」


 リディアさんがそう言うと、赤髪のエルフの女性は僕の方に視線を送った。

 そして、口角を上げると再度リディアさんの方に視線を戻して言う。


「あんまり乗り気じゃ無かったけど、同じSランク冒険者と戦える機会なんて滅多に無いし、何より、仮にもSランク冒険者の君のことを私が完膚無きまでに倒してリアムくんにカッコいいところ見せるチャンスだから、その決闘受けてあげる」

「リアムさんに良いところを見せるのは私であって、あなたはただ一方的に敗北するだけだと知りなさい」

「へぇ、まぁ、Sランク冒険者って言うんだったら、私がちょっと魔法で攻撃したぐらいじゃ壊れちゃったりしないよね」

「あなたこそ、仮にもSランク冒険者を名乗っているのであれば藁人形よりは耐久性があることを期待させていただきます」


 そう言い合った後、リディアさんは真剣な表情に、赤髪のエルフの女性は口角を上げた表情になっていると、リディアさんが元々魔法学校に居たエルフの女性に話しかける。


「申し訳ありませんが、闘いを行うのに向いている場所を借りることはできますでしょうか?」

「は、はいっ!こ、こちらに……!」


 エルフの女性は、大魔法使い様が来たことや、リディアさんがSランク冒険者だということ、そしてその二人が闘うということに対してかなり動揺しているみたいで、その動揺を声に出しながらも僕たちのことを闘うのに向いているという場所に連れて来てくれた。


「こ、こちらは訓練場ですので、多少派手な攻撃でも問題無いと思われます」

「ありがとうございます」


 リディアさんが丁寧にお礼を言うと、そのエルフの女性は僕たちから少し離れた場所で二人の決闘を見守るつもりらしく移動して、僕もそのエルフの女性より少し手前で二人の決闘を見守ることにした。


「私の方はいつでも構いませんが、あなたの方はいかがでしょう」


 そう言ってリディアさんが剣を構えると、赤髪のエルフの女性が楽しそうな声色で言った。


「私もいつでも────あ、待って」


 リディアさんと向き合っていた赤髪の女性は、そう言うと僕の方を向いて手を振って話しかけてきた。


「リアムくん〜!応援よろしくね〜!」

「えっ!?」


 僕が突然笑顔でそう言ってきた赤髪のエルフの女性に驚いていると、リディアさんが言った。


「どこまでも不愉快な方ですね、リアムさんがあなたのような方を応援するはずがないでしょう……あなたが二度とふざけたことを言えないように、私がこの場にてあなたのことを斬って差し上げます」


 そんなリディアさんの言葉を聞いた赤髪のエルフの女性は僕の方を向くのをやめてリディアさんと向き合って言う。


「ふ〜ん?まぁ、口では何とでも言えるからね〜」

「でしたら、実際に斬ることで証明して差し上げましょう……リアムさん、合図をお願い致します」

「えっ!?わ、わかりました!」


 突然合図をお願いされて驚いた僕だったけど、僕は手を上に挙げてから、その手を一気に振り下ろして言う。


「決闘の開始をお願いします!」


 僕がそう言った直後、リディアさんは赤髪のエルフの女性に距離を詰め、赤髪のエルフの女性は魔法を展開し始めた。

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