第11話 リアム、魔力を測定する

◆◇◆

 視界が光に包まれて、何も見えなくなったけど────その次の瞬間。

 僕の目には、巨大樹が映って、さらにその巨大樹を中心にとても繁栄している植物でできた街が映った。


「す、すごい、これがマギアトス……!」


 そこにある全てが木や植物といった自然からできるもので作られていて、ツリーハウスがあったり綺麗なお花が目立つ場所があったり、同じ世界なのにまるで別の世界に来たような気分になった。


「噂には聞いていましたが、これほどとは……流石はエルフの国の中央都市と言われるだけあるようですね」

「そうですね……」


 その後、僕とリディアさんはエルフの人たちから僕たちの目的地、魔法を学べる場所がどこにあるのかを聞きながらマギアトスを歩いた。

 そして、どうやらその魔法を学べる場所の正式名称は魔法学校というらしいことがわかったため、それがわかってからはスムーズに進み────いよいよ、それらしき建物の前までやって来ると、僕とリディアさんはその建物の中へ入った。

 すると、一人のエルフの女性が僕たちに向けて話しかけてきた。


「そちらの二名様、どのようなご用件でしょうか?」

「こちらの魔法学校で、短期間で魔法を学べると聞いたので、それを学ばせていただきに来ました」

「ご入学ではなく短期魔法実践学習の方ですね……でしたら、まずは魔力測定器によって魔力の方を測らせていただきます」


 そう言うと、エルフの女性は水晶玉のようなものを取り出して言う。


「こちらの水晶玉はとてもわかりやすく、送られた魔力が強ければ強いほど輝くといったもので、逆に送られた魔力が弱ければ弱いほど小さくしか輝かないといった代物になっております」

「なるほど……でしたらリアムさん、私はリアムさんの後で構いませんので、お先に魔力を測られてください!」

「わかりました!」


 僕は、リディアさんのお言葉に甘える形でその水晶玉に手をかざすと、先ほど転移魔法陣に向けてやったのと同じように魔力を込める。

 だけど────


「……」


 水晶玉は強く輝くどころか、小さくすら輝くことは無かった。

 それを見たエルフの女性は、少し気まずそうにしながら言う。


「魔法学校にご入学なされるのであれば可能性は大いにあるかと思いますが、少なくとも水晶玉が全く輝かないとなると、現状では短期魔法実践学習の方は、あなたには難しいかと思われます」

「っ!」


 その言葉を聞いたリディアさんは怒ったように声を上げると、続けて言葉に強い語気を乗せて言った。


「この誇り高きアストリア家の騎士、リディア・アストリアがお供しお支えすると決めたお方に対してそのような無礼な言葉を向けるなど、そのようなことが許される道理は無いと知りなさい」

「ア、アストリア家というと、Sランク冒険者の……!?ど、どうしてそのようなお方がこの場所に……」


 エルフの女性は驚いた様子でそう言うと、続けて慌てた様子で言った。


「し、失礼であることは百も承知ですが、いくらアストリア様と共に居る方と言っても、これほどまでに魔力適性が無いとなると……」

「それ以上リアムさ────」


 僕は、僕のために怒ってくれているリディアさんとそのエルフの女性の間に割って入ると、リディアさんに向けて言った。


「い、良いんですリディアさん、僕が力量不足というのはわかっていて、むしろその力量不足を改善するためにここにやって来たんですから」

「ですが────」

「あ、水晶玉やってる〜!懐かしいなぁ」


 今の場の雰囲気と全く合っていないほどに明るい女性の声が僕たちの後ろから聞こえてくると、僕たちは後ろを振り返った。

 すると────そこには、昨日出会った赤髪のエルフの人が居た。


「あなたは……」

「っ……!」


 僕は見覚えのある人物だったことに少し驚き、リディアさんは警戒するように僕よりも一歩前に出た。

 ────だけど、その次の瞬間。


「だ、大魔法使い様……!?」

「……え?大魔法使い……様?」


 僕は、そのエルフの女性の言葉に理解が追い付かず困惑してしまったけど、その大魔法使い様と呼ばれた赤髪のエルフの女性はそんなことを気にせずに楽しそうな表情で口を開いて言う。


「その子の魔力はそんな簡易的な魔力測定器じゃ測れないよ〜?あの輝きを失った転移魔法陣を1秒で治したって話だし……ね、可愛い人間の男の子」


 そう言うと、その赤髪のエルフの女性は僕に向けてウインクをしてきて────僕は、その目に思わずドキッとしてしまった。

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