第10話 リアム、異質な魔力を見せる

「リ、リディアさん!?僕、まだまだAランクパーティーから追放されてしまうほどの力なので、とてもじゃないですけど上質、それも最高級の魔力なんて────」

「リアムさんの魔力というだけで、その魔力は最高級……いえ、それは最高級という言葉ですら形容できないほどに素晴らしい魔力なのです!」

「えぇ……」


 そんなことを言われても、僕の魔力なんて大したことないのに……でも、リディアさんがここまで言ってくれているのに、試すこともせずに諦めるわけにはいかない。

 僕は、そんな思い出エルフの女性に聞く。


「あの……すみません、一応この転移魔法陣に魔力を送ってみても良いですか?」

「はい、構いませんが……」


 僕の不安が無さそうな様子を見てか、エルフの女性は僕に期待はしていないようだった……けど、それ以上に僕は自らの魔力によってエルフの族長様、もしくはSランク冒険者としても活躍しているらしい大魔法使い様と同等の魔力なんて出せるはずが無いことを自覚している。

 そのため、これは本当にリディアさんがあそこまで言ってくれたのに試しもせず諦めたく無いという感情によって行うだけに過ぎない。

 ということで、僕は魔力による輝きを失っている転移魔法陣に向けて手をかざしてからエルフの女性に聞く。


「これは、もし魔力の質が必要な質に達している場合、どのぐらいの間送り続ければ治るんですか?」

「そうですね……個々の魔力の質の度合いによると思いますが、一例として族長様は1分ほど、大魔法使い様は5から10秒ほどとお聞きしています」

「10秒と1分……本当に、人によって差がありそうですね」

「はい、ですがそもそもこの転移魔法陣に魔力を送ることが可能というだけですごいことであり、族長様が1分かかっているからと言って大魔法使い様よりも大きく劣っているわけではないということをご承知ください」

「はい、もちろんです」


 聞く感じだと、この転移魔法陣はあくまでも魔力の質だけを測るもの……魔力量や魔法の属性など、そういったものは度外視のためこれだけで安易に力を測ろうとするのは危険だと言える。

 でも、大体の目安はわかったから、もし10分ぐらい経っても何も起きなかったらその時は諦めよう。

 そう決めた僕は、かざしていた手に魔力を込めてそれを転移魔法陣に送────り始めた時、突如転移魔法陣が光ったと思えば、その次の瞬間には魔力による輝きを取り戻した。


「……え?……え?こ、この魔力は……!?」


 僕が手をかざしてから約1秒でそんなことが起きたことに、エルフの女性はかなり動揺、驚愕している様子だった……もしかして。


「す、すみません!僕、何か転移魔法陣に不具合とか起こしちゃいましたか……?」


 不安になりながらそう聞くと、エルフの女性は慌てて首を横に振って言う。


「い、いえ、この反応は至って正常な転移魔法陣の反応ですが……しかし、このようなことが……?」


 エルフの女性はまだかなり動揺しているみたいだったけど、メガネをかけたエルフの男性がエルフの女性に聞く。


「とにかく、これで転移魔法陣は使えるようになったんだな?」

「は、はい、問題無いと思われます」


 エルフの女性が動揺しながらもそう返事をすると、メガネをかけたエルフの男性が今度は僕に向けて言った。


「助かったぞ少年、この借りはいつか必ず返そう」

「え?は……はい」


 僕がまだ状況を飲み込めないで居るも、そのメガネをかけたエルフの男性は転移魔法陣に入り────その瞬間、姿を消した。

 おそらくは転移先へ転移したんだと思う。

 僕がそんな光景を見ていると、リディアさんが僕に向けて笑顔で言った。


「流石リアムさんです!このような問題を瞬時に解決してしまうとは!私も騎士として見習わねばなりませんね!」

「えっと……そう、ですか」


 よくわからないけど、ひとまず転移魔法陣が使えるようになったなら、これでトラブルも無くなるだろうから良かった、のかな。


「少しトラブルがありましたけど、一応問題は解決したみたいなので僕たちもマギアトスに行きましょう」

「わかりました、リアムさん!」


 僕たち二人は、そう会話をすると二人で一緒に転移魔法陣に入った。


「お、お待ちください!あなたは一体────」


 エルフの女性が何かを言いかけた時、僕の視界は光に包まれ、何も見えなくなりエルフの女性の声も途切れた。



◆◇◆

「あ、あの方は、一体……」


 転移魔法陣近くに残っているエルフの女性がまだ先ほどの光景を信じられずに驚いていると、ある女性がそのエルフの女性に話しかけてきた。


「あれ?転移魔法陣が機能しなくなったって聞いて来たんだけど、その転移魔法陣機能してるよね?」

「っ!こ、これは大魔法使い様!ご足労いただき感謝致します!」


 エルフの女性がそう言ってその人物、大魔法使いに頭を下げると、続けて頭を上げてから言った。


「先ほどまでは機能して居なかったのですが、おそらくは人間と思われる男性が魔力供給を試みた際、とんでもない魔力の質により1秒ほどの時間で魔力供給を終えてしまい……正直、私も混乱している状況です」

「とんでもない魔力……ねぇ、その人間の男の子って、このくらいの身長の男の子?」


 そう聞くと、大魔法使いは自らの胸元辺りに手を添える。


「はい、そうです」

「へぇ、やっぱり私の見立ては間違って無かったんだぁ……ふふ、余計に興味が湧いて来ちゃった……」


 そう呟いた大魔法使いは、リアムがこの転移魔法陣でマギアトスに転移したことをエルフの女性に確認すると、その後を追うようにその転移魔法陣に入った。

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