第9話 リアム、保証される
◆◇◆
────翌日。
昨日は意識を途絶えさせてしまったけど、あれから少しして起きるとちゃんとお風呂に入ってから改めて眠りについた。
「おはようございます、リアムさん」
「おはようございます、リディアさん」
そして、目を覚ますと僕よりも早く起きているリディアさんが僕に朝の挨拶をしてくれたため、僕もそれに返事をする。
女の人と二人きりで、それも同じ部屋で隣り合わせになっているベッドの上で眠るのは初めての経験だったからちゃんと眠れるか不安だったけど、突然パーティーを追放されたりエルフの国までやって来たり、思っているよりも色々と疲れが溜まっていたのかすんなりと眠ることができた。
「リアムさん、本日はどうされますか?」
「今日は、早速ですけど行きの馬車の中でも話した通り短期間で魔法を学べる場所があるらしいので、そこで魔法の修行をしようと思ってます」
「わかりました!私もお供致します!」
「ありがとうございます!」
その後、僕たちは身支度を整えると、宿から出て修行を行う場所に向けて歩き始めていた。
「リアムさんの仰られている、その短期間で魔法を学ぶことのできる場所というのは一体どこにあるのでしょうか?」
「このエルフの国の中央都市マギアトスという場所にあるらしいです」
僕がそう言うと、リディアさんは考える素振りを取って言う。
「マギアトスというと、このエルフの国の植物全てに根を張るという巨大樹がある場所ですね……中央都市となると、入国場所付近に居る私たちの場所から到着するのは本来であればかなり労苦を求められてしまいそうですが────エルフの国であれば、問題無さそうですね」
「はい」
エルフの国は魔法技術に優れた国で、転移魔法陣というものによってそれぞれの街からそれぞれの街へと転移できるようになっているらしい。
そのため、どれだけ距離があったとしてもその場所まで行くのは難しいことじゃない。
────ということで。それから約10分後。
僕たちは中央都市マギアトスへの転移場所へ到着したため、早速転移させてもらおうとした……けど。
「────転移ができないって、どういう意味だ!」
「それが、原因は不明でして……おそらく転移魔法陣への魔力供給が足りていないのだと考えれますが、この転移魔法陣への魔力供給を行えるのは族長様かSランク冒険者としてもご活躍されている大魔法使い様ほどに上質な魔力を有している方だけですので、今大魔法使い様に来ていただくよう申請を出しております……ですので、もう少しお待ちいただいてもよろしいでしょうか?」
「そんなことを言われても困る!こっちは重要な案件を抱えてるんだ!」
「そう言われましても……」
どうやら、僕たちも使用したいと考えていた転移魔法陣が、原因不明の理由によって使用ができなくなってしまっているらしい。
そのことを説明するエルフの女性に対して、メガネをかけたエルフの男性が怒っているみたいだ。
「不測の事態に意味も無く喚き散らかすとは……一度私があのエルフの男性をお静かにして差し上げても良いかもしれませんね」
僕は、僕の隣で厳格な表情をしてそう言うリディアさんのことを宥めるように言う。
「ま、まぁまぁ、確かに怒鳴るのはよくないと思いますけど、本当にタイミングが悪かったみたいなのでここは穏便に解決できる道を探しましょう」
「流石は寛大なお心を持たれるリアムさんです、リアムさんがそう仰られるのであれば、私もそうしたいと思います!」
リディアさんは、僕に笑顔を向けてそう言った。
ひとまず、リディアさんが落ち着いてくれたのは良かったけど、とにかく今は転移魔法陣のことをどうにかしないと。
僕は、怒っているエルフの男性に謝っているエルフの女性の方に話しかける。
「あの、すみません……少しいいですか?」
「っ!君!彼女とは今僕が────」
僕に向けて怒りの声を放とうとしたメガネをかけたエルフの男性だったけど、僕の後ろに視線を送ってから何故か顔を青ざめてその続きを言うのをやめた。
……どうして突然そんな変化が起きたのかはわからなかったけど、エルフの女性が頷いてくれたため僕は続きを話す。
「この転移魔法陣は、どうすれば魔力供給を行えるんですか?」
「魔力供給自体は、こちらの転移魔法陣へ向けて魔力を放つだけでできます……が、それを行えるのはとても上質な魔力を持つ方だけなので、我々には────」
エルフの女性がそう言いかけた時、リディアさんが僕とその女性の前にやって来ると、リディアさんは僕の方に手を向けて言った。
「ご安心ください、こちらにいらっしゃるお方は上質どころか最高級の魔力を持たれるお方ですので、そのような問題は瞬時に解決なされますことを誇り高きアストリア家の騎士でありSランク冒険者でもあるこのリディア・アストリアが保証致します」
え!?
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