第7話 リアム、見惚れていた!?

◆◇◆

 宿を見つけた僕とリディアさんは、その宿に宿泊させてもらうために、その宿の女性エルフの管理人さんに話しかける。


「すみません、宿泊のための部屋は空いてますか?」

「はい!空いてますよ!一人用の部屋が二部屋でも、二人用の部屋が一部屋でもどちらでも準備が可能ですが、どちらが良いですか?」

「一人用のお部屋を二つ────」

「お待ちください、リアムさん」


 僕がそう言いかけた時、リディアさんが僕の言葉を遮る形でそう言った。

 そして、続けてリディアさんは管理人さんの方に話しかける。


「今頂いた二つの選択肢の料金をそれぞれ教えていただいてもよろしいですか?」


 リディアさんがそう聞くと、管理人さんは頷いて答えてくれて、その内容を簡単にまとめると、1人用の部屋が2部屋の場合、と2人用の部屋が1部屋の場合よりも値段が高くなってしまうとのことらしい。

 その説明を受けたリディアさんが、次に僕に向けて言う。


「リアムさん、私はあのドラゴンを討伐すべく必要最低限のものしか持たずにこの場まで来たので、今は金銭の手持ちが少ないです……リアムさんも元のパーティーではそこまで報酬をもらえていなかったとのことですので、同様だと思います」

「それは……はい」


 何も言い返すことができないほどにその通りだったため、僕は素直に頷く。


「でしたら、いつ冒険者としてクエストを受け報酬を得られるか先が見えない間は、節約できるところは節約することが大事だと判断し、本日は二人用の部屋に私たち二人で宿泊するべきだと考えます」

「ぼ、僕とリディアさんが、同じ部屋で……!?」

「はい、もちろんリアムさんがどうしても嫌だと仰るのであれば、無理にとは言いませんが……」


 リディアさんが、どこか不安そうな、悲しそうな表情でそう言った。

 ────僕のせいで、リディアさんのことを不安にさせちゃってる!

 僕は、そのことに慌てながらもリディアさんに伝える。


「い、嫌なんかじゃ無いです!今後の僕たちのことを考えたらそうした方が良いのは僕でもよくわかるため、今日は一緒に泊まりましょう!」

「リアムさん……ありがとうございます」


 僕たちは、二人用の部屋に二人で宿泊することになると、その部屋の鍵をもらって一緒にその部屋の中に入った。

 部屋の中には木でできた机に椅子、そしてしっかりと寝心地が良いように毛の使われているベッドにお風呂までついている。


「すごいですね……人の国にある宿とはまた雰囲気が違って、新鮮な感覚です」

「そうですね」


 この新鮮な感覚に、探検心のようなものがくすぐられると、僕は部屋の中にあるエルフの国特有の小物を見て回った。

 そして、一通り見終えて落ち着くと、リディアさんが僕に話したいことがあるとのことだったので、僕はリディアさんに促される形でリディアさんと一緒に近くにあったベッドの上に座った。


「リディアさん、僕に話というのは……?」


 僕がそう聞くと、リディアさんは少し間を空けてからどこか気まずそうな声色で言った。


「……私がリアムさんにお話ししたいのは、先ほどの赤色の髪をしたエルフの方と接していた時のリアムさんについてです」

「あの人と話していた時の……僕について?」

「はい……もう少し具体的に、加えて率直的にお伝えするのであれば、リアムさんがあの方に見惚れていたように見えたことについてです」

「え、えぇ!?」


 僕があの人に見惚れていた……!?


「ぼ、僕、見惚れてなんて────」


 と否定しようと思った僕だったけど、あの人の体に視線が行ってしまっていたのは事実のため、口を閉ざしてリディアさんの話を聞くことにした。


「確かに、あの方は容姿で言えばとても綺麗な方でしたし、体も露出させていたので私より1つ年下とは言っても男性のリアムさんが見惚れてしまう……場合によっては、それ以上の欲求が出てきてしまっても仕方無いのだと、頭では理解しています……ですが、私はリアムさんのそういった欲求を、あのような方に向けて欲しく無いのです」


 よ、欲求……!?

 僕は、突然のリディアさんの少し刺激の強い話に心拍数を上げる。

 が、リディアさんはそんな僕の様子に気付いていないのか、続けて頬を赤く染めて少し恥ずかしそうにしながらも口を開き、自らの着ている鎧に触れながら言った。


「ですので、私を助けてくださり、私よりも強き力を持つリアムさんに、そういったことが必要なのであれば、私は────」

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