第4話 リアム、リディアの剣技を見る
「────私の負傷はリアムさんが完全に完治してくださったのですから、馬車での移動で無くとも良かったのですよ?」
修行のための旅として、まず最初にエルフの国に向かうことにした僕とリディアさんは、移動手段を馬車として山道を進む形でエルフの国へ向かっていた。
おそらく、リディアさんは機動性には自信があるだろうし、僕もSランク冒険者のリディアさんに匹敵するかはわからないけど、少なくとも二人で魔法によって移動すれば馬車の何倍も早く目的地に到着することができただろう……だけど。
「それでも、ついさっきまで負傷していたリディアさんのことを走らせるなんて、したくないんです……それに、こうして道中を楽しむのも旅の楽しみの一つだと思ってるので、道中も一緒に楽しみましょう!
「確かに、その通りですね……せっかくですので、道中も楽しむことにさせていただきたいと思います!リアムさん、優しいお心遣いをいただきありがとうございます」
リディアさんはとても明るい笑顔でそうお礼を言ってくれた。
「と、とんでもないです!」
僕はそのリディアさんの綺麗な顔と表情に少しだけドキッとしながらもそう言うと、その感情から意識を逸らすように話題を変える。
「リディアさんのお体は僕の魔法で治すことができましたけど、鎧の方はエルフの国に入国したらすぐに鍛冶────」
僕がそう言いかけた時、突然馬車が停止して突然馬車全体に衝撃が走った。
その直後、僕とリディアさんは反射的に馬車から降りて、馬車の前を見る。
すると、そこには目つきが悪く武器を手に持っている三人の男性が居た。
ここが山であることやあの人たちの見た目、雰囲気から考えるにおそらく山賊の人だろう……僕とリディアさんがその山賊の人たちのところへ向かうと、その山賊の人たちは僕たちの方を見て言った。
「ガキと女……それも女の方はかなり上玉じゃねえか、わざわざ馬車を止めた甲斐があったってもんだ」
「へへっ、遊びがいがありそうですぜ」
「先にガキの方からやっちまいましょう!」
「黙りなさい」
一瞬誰の声かわからなくなるほどとても鋭い声色だったけど、その声を発したのは僕の隣に居るリディアさんで、その声を向けられた山賊の人たちは驚いた様子だった。
そして、リディアさんが凛々しい顔立ちで僕よりも前に出て山賊の人たちと向き合うと、その山賊の人たちは驚いたもののすぐにリディアさんの方を見ながら言う。
「姉ちゃんの方はちゃんと生かしてやるから安心しなって、それにしても良い体つき────」
「黙りなさいと言ったでしょう、言葉すら聞くことができぬ理性無き生き物なのであれば今すぐこの場から消えなさい」
「あぁ!?先にそっちの間抜けそうなガキから始末してやろうと思ったが、予定変更だ……先に生意気なお前から身ぐるみ剥いでやるよ!」
そう言うと、山賊の人たちは三人で同時にリディアさんに襲いかかった。
「リディアさん!」
僕が助けに入るべく魔法を放────とうとしたけど、その瞬間にリディアさんが言った。
「このような輩を相手に手助けは不要です……誇り高きアストリア家の騎士である私だけでなく、その私の恩人であるリアムさんのことを嘲ったことを後悔なさい」
その直後────リディアさんはとても流麗な斬撃によって山賊の人たちの武器を弾き飛ばすと、最後に風系統と思われる魔法でとても遠くに吹き飛ばした。
「全く……あのような輩にわざわざ剣を振らねばならぬなど────」
「リディアさん!すごい剣技でしたね!」
「リ、リアムさん!?」
僕がリディアさんとの距離を詰めてそう言うと、リディアさんは頬を紅潮させて何故か一歩後ろに下がった……けど、僕はその一歩分距離を縮めて言う。
「とても流麗な剣技で、風魔法もすごかったです!」
「そ、そのようなことは……それに、あの程度でしたらリアムさんでも可能なのでは────」
「リディアさんの剣技、本当に美しかったです!」
「っ……!……ありがとう、ございます」
◆◇◆
山賊の一件で事なきを得たリアムとリディアは、二人で一緒に再度馬車に乗り目的地のエルフの国へ向けて再度進み始めた。
「さっき言いかけたことなんですけど、リディアさんの鎧はエルフの国に入国したら街とかにある鍛冶屋さんで治してもらうことにしましょう」
「はい、そうですね」
表面上平静を装ってそう返事をしたリディアだったが────先ほど突然リアムに距離を縮められたことや、自らの剣技を褒められたことによって、内心ではかなりドキドキを抱いていた。
────男性とあのような距離になったことなど今まで剣の練習などで対峙する時しかなく、ましてやあのようなキラキラとした目を向けられ、私の剣技を美しいと仰ってくださった……
「……」
その後、馬車がエルフの国に入国するまでの間、リディアは今まで騎士、そしてSランク冒険者として生きてきた経験の中で感じたことのない感情を感じ、表面上平静を装ってリアムと会話しながらも内心ではリアムと話す度に胸が高鳴りながら過ごした。
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