第3話 リアム、リディアと旅を始める
◆◇◆
「っ、リディアさん!今のはわざとじゃ────」
意識を朦朧とさせていた僕が、やがて意識をハッキリとさせてすぐに今の誤解を解こうと目の前に居るリディアさんの誤解を解くとともに謝ろうとした……けど、いつの間にか、目の前に居るリディアさんは鎧を着て万全という状態になっていた。
「あ……あれ?リディアさん、いつの間に……?」
「リアムさんが意識を朦朧としておられた間に、鎧を着用させていただきました……それにリアムさん、私はリアムさんがわざとあのようなことをしたなどとは思っていませんよ、短い時間ですが、リアムさんがとても心優しい方だというのは伝わってきています」
「っ……!リディアさん……!」
いくら鎧の下と言っても、しっかりと考えればもっと他の方法もあったのに、リディアさんが痛そうにしてるのを見て焦ってしまった僕の未熟な行動……リディアさんからしてみれば僕がやましい気持ちの一つぐらいあったと考えてしまっても不思議は無いのに、リディアさんの目は全く僕のことを疑っていなかった。
本当に優しい人だ。
「リディアさん、ありがとうございま────」
「ですが」
そう前置きをすると、リディアさんは続けて言った。
「わざとでなく、状況が状況だったとしても、このリディア・アストリアの生肌……それも、下着姿を見たということに対しては責任を取ってもらわねばなりません」
「え、え!?責任……!?」
「リアムさんは知らぬようですが、私はある国の王族直属の騎士の家系、アストリア家の人間であり、私自身も最高位の騎士と認められ、それは今や本国だけでなく騎士に少しでも通ずる方であれば共通認識となっているほど……私は、そのアストリア家の騎士ということに、誇りを持っています」
規模が大きくてとてもついて行けそうに無いけど、リディアさんは続けて言う。
「そして────私はこれまでの生涯、腕や足などの通常時でも見られる部位以外の生肌など見せたことがなく、ましてや下着姿などを男性に見せたことなど無かったのです……誇り高き騎士の家に生まれた私にとって、これがどれほどの意味を持つか、ご理解いただけますか?」
「そ、想像は、できます」
「ここまでわかってくださったのであれば、あとはリアムさんに責任を取っていただくだけです」
「せ、責任……あの……僕は、何をすれば……?」
リディアさんに向けて、僕は恐る恐るそう聞く……真面目な表情で話しているリディアさんは本当に厳格な雰囲気というか、優しい人で綺麗な人でもあるけど、騎士の家系の人だからなのかな……もしとても高額を請求されたりしたらどうしよう。
力量不足とはいえ、一応ゼインさんたちは僕にクエスト報酬をくれていたけど、それもほとんど残っていないからとてもじゃ無いけど今すぐにそんな高額を払うことはできない。
僕が、次のリディアさんの言葉に心臓をバクバクさせながら耳を傾けると、リディアさんは口を開いて優しい表情で言った。
「リアムさんには────私がこれよりリアムさんにお供させていただくことを、許可していただきたいのです」
「……え?」
どんな表情でどんな要求をされるのかと心臓をバクバクさせていた僕だったけど、リディアさんの口から出てきた言葉は僕の予想外の言葉だった。
僕がその言葉に困惑していると、リディアさんが言う。
「それとも……リアムさんは私が居ると迷惑、でしょうか?」
「そ、そんなことないです!ただ、僕が想像していたものと全く違うことだったので、驚いてしまって……それに、僕は修行のために色々なところを回るだけなので、僕についてきても何か面白いことがあるわけでは……」
「とても良いではありませんか、リアムさんと共に鍛錬の旅に出ることができるなど……とても楽しい旅になることが容易に想像できます」
リディアさんがどうしてこんなことを言ってくれたのか、僕にはわからないけど……それが僕に取ることのできる責任なら。
「わかりました、リディアさん……今日からよろしくお願いします!」
「はい!リアムさん、こちらこそよろしくお願いします」
僕がそう言うと、リディアさんはとても優しい笑顔でそう言ってくれた。
その後、僕とリディアさんは洞窟を出ると、次の目的地────エルフの国に向けて移動を始めた。
────こうして、僕の……僕たちの旅が幕を開けた。
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