第12話

「おかえりー」


「ただいま」


「…あんたどうしたの?魂が抜けたような顔してるけど」


「まぁ、いろいろあったんだよ」


「そっか。部屋でプリンでも食べて落ち着きなさい」


「あぁ、ありがとう」


家に着き、プリン持ってそのまま部屋に向かう。

部屋に着くと、バックとプリンを机に置いてソファにもたれかかる。


一体なにが起きたのかを整理しよう。

確か、クラスのマドンナ達とファミレスに行って、帰りに謎の小動物が現れて俺を魔法少女にするとか…

おっと、どうやら頭がまだ沸いてるようだ。


ファミレスの帰り道、俺は真白をデートに誘った。

あのシュチュエーションで行動をしないなんてありえないからな。

だから俺は、玉砕覚悟で絶対に断られるであろう提案を投げかけた。

そうしたら、俺が全てを言い終わる前に即答された。

「行く」と。

その後のことはあまり覚えていないが、唯一、真白が再び背中を向けて家に帰ったことは覚えている。



「しゃぁぁぁぁぁ!!!」


「大司!ご近所さんに迷惑かかるでしょうが!叫ぶなら枕に顔埋めて叫びなさい!」


すまんなマミー。

このたぎる思いが前面にでてしまっていた。


「これはイベント成功と言ってもいいのではないか」


色々紆余曲折はあったが、ヒロインとデートをするイベントまで漕ぎ着けることができた。

よくやったぞ、おれ!


「…あっ」


しまった。

とてつもないミスに気づいてしまった。

明日のデート、なにするか決めていない。

当然見切り発車だからな、勢いでどうにかしてしまったこともあるが…


「断られるもんだと思っていたんだけどな」


正直OKが来るとは思っていなかったのだ。

幼馴染ということもあるし、出かけに誘うだけならOKを出すのもわかるが、俺は明確にデートと伝えた。

そうすると一つの疑問が残る。

真白は何でデートを了承してくれたんだ。


再び解が出ないことを考えていると、スマホの突然が鳴った。


「もしもし?」


「大司!明後日あそぼーぜ!!」


スマホからは安心する声が飛んできた。


「すまん優也、明後日は予定が入ってるから難しいな」


「そうか…珍しいな、休みに予定入るなんて」


「俺だってどこか出かける時くらいある」


「嘘つけ、いつも休みの日は家でラブコメ読み漁ってるかギャルゲーをプレイするかの二択だったろ」


さすがだ優也、俺の行動パターンはまるっとお見通しか。毎日のように家に来ていた事だけはある。


「実はな…」


俺は優也に今日あった出来事を話した。

優也は黙って俺の話を聞いてくれた。

こういう時は茶々を入れず聞いてくれるのもこいつのいいところだ。


「そうか…それで日曜は大野と出かけるのか」


「あぁ、そうなるな」


「大野のやつ、俺と大司の時間を奪いやがって」


優也は相変わらず俺と木藤以外には辛辣だ。

しかし、今の言葉でハッとした。

ラブコメ大作戦がうまくいったら3人で過ごす時間も必然的に少なくなってしまう。

俺はそのことに気づいていなかった。


「すまんな」


「謝んなって、大司がやりたいことを見つけたのは素直に嬉しいんだ」


優也はこういうやつなんだ。

なんだかんだ周りに憎まれ口を叩きながらも思いやりを持って行動できる人間ができたやつなんだ。

…できれば、そのいいところをもう少し周りにも分け与えられたらと考えるのは無粋だろう。


「ただ…」


「ただ?」


「木藤はこのことを知ってるか?」


「いや、優也が最初だから木藤には話してないな」


「そうか…一つ頼んでもいいか?」


優也は神妙な声色で俺に言った。


「休み明けでもいいから、あいつにはちゃんと話してやってくれ」


「そうだな、そのつもりではあったんだが…」


「ならいいんだ」


優也は頼みを言い終わると、いつもの調子に戻った。


「全力で楽しんでこいよ!!」


ふっと笑いが込み上げる。

やっぱりこいつは最高の友人だ。


「あぁ、思いっきりラブコメ楽しんでくるぞ!」


そこで優也との電話を終え、俺は再びソファに身を委ねる。


木藤には言うつもりだったんだかな、なんで優也はわざわざ俺に言ったんだろうか。

今日は考えることが多すぎたと感じた俺は少し休み、そして真白に集合時間と場所を連絡した。

さぁ、ここからが大仕事だ。

人生初のデートプランを考えなくてはならない。

相手は三大マドンナの1人、桜のマドンナ大野真白。

しかもソロ攻略戦だ、強大すぎる相手には入念な準備をしておかなくてはな。


〜数時間後〜


だめだ…全く思いつかない!!

ラブコメ大使のこの俺がデートプランで悩むだと…

この数時間、最初におしゃれなカフェを見つけたためランチまでの流れは計画できたのだが、その後の展開がどう考えても気まずくなる未来しか見えない。

現実の女の子はパンケーキ食わせとけばいいんじゃなかったのか知恵袋!!


頭を悩ませていた俺だったが一つ天啓が降りてきた。

そうだ…そうだった…

今時の女の子が好きなものは、今時の女の子に聞けばいいのだ。


閃いた俺はスマホに手を伸ばし、1人の友人に電話をかけた。


「もしもし」


「どうしたの、いきなり電話してきて」


「木藤、デートするならどこにいきたい?」


「…へ!?」

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