第4話
あっという間にHRとクラス替え特有の自己紹介が終わり帰りの時間になった。
また同じクラスになれて嬉しそうに話す生徒や、自己紹介でふざけてスベリ倒し泣きそうになってる生徒など、いつになっても変わらない光景があった。
「大司、一緒に帰ろうぜ」
優也がいつも通り声をかけてきた
「そうだな、帰るか」
「そうだ、今日大司の家行っていいか?」
「いいけど、なんでだ?」
「この間読んだ『やはりワシの戦国ラブコメは間違っておる』の続きが気になってしゃーないんだよ!」
純粋な楽しみを持ってる人間の目はこうも
キラキラ光るのかと思うと自然に笑みが溢れた。
「いいぞ、思う存分読んでくれ」
「しゃあぁ!!あ、そうだ」
優也は何か思い出しかのような反応をし
そのまま隣人の木藤に体を向けた。
「木藤、お前もこいよ」
「え、なにいきなり…どこにいくのよ」
「大司の家」
「あのラブコメ漫画だらけの空間になんで行かなきゃいけないのよ」
「お前もこの前『好きです!山田くん』を前のめりで見てたじゃねーか、もう読み終わったのか?」
「まだだけど…大体家主の許可もなしに普通誘う?」
木藤はチラッと俺の方に目を向ける。
「俺は構わんぞ、むしろラブコメの素晴らしさを思う存分味わってくれ」
「…そっ」
木藤はそっと立ち上がりバックを肩にかける。
「じゃあ早く行きましょう」
「…やっぱりお前、続き気になってたんじゃねーか」
「矢幡うるさい」
一年生の頃と同じ光景が目の前にあるからか、
新しいクラスへの緊張がすっと溶けてくような感覚がした。
優也は俺以外にも、もう1人だけ、心を許している人物がいる。
それが木藤だ。
元々、優也と知り合う前に俺と木藤が一緒にいたこともあるが、俺たち3人がこうして一緒にいるようになったのは、やはり1年生の夏にあった出来事が大きいだろう。
「あ、大司!もう帰るの?」
「きふじーん!きふじんも帰るのぉ?」
「私も帰るよ。あと木藤ね。誰よ、きふじんって」
帰ろうとした矢先、桜と紅葉のマドンナに声をかけられた。
一気に周りの視線が集まり、なんとも言えない空気感が漂い始めた。
あと、きふじんってアダ名いいな、今度使ってみるか。
…やめとこう、俺の覇気がずいぶん先の未来を見てやがる。
「この後私と姫花、あと千紘をさそってご飯行こうと思ってたんだけど、大司と木藤さんも来ない?」
(おい、三大マドンナたちとのご飯会だと…!)
(止まらなねぇよ…怒りが…)
(マドンナたちと食いにいく飯があいつの最後の晩餐だ…)
行ったらタダじゃ済まないだろうな。
確かに三大マドンナとご飯に行けるのは魅力的だが、先約もあるし、何より無事じゃいられなさそうだしな。
誘いを断るのは気がひけるし苦手だが、やるしかない。
「すまん、今日はむず…」
「いかねぇ」
優也、平常運転すぎるって。
「あんたのことは別に誘ってないわよ矢幡、私は大司と木藤さんを誘ってるんだから」
「大司も木藤も先約があんだよ」
「そうなの?」
真白はこちらに目を向ける。
「あぁ、この後俺と優也と木ふ…」
「この2人はこの後、北方の家で遊ぶって。
私は違う用事で帰らないといけないんだ、誘ってくれたのにごめんなさい」
「おい、お前も一緒にグフゥ!!」
優也が膝をついた。
全く見えなかった、俺じゃなくても見逃しちゃいそうなレベルの一撃だ。
「そっか、それはしょうがないよね」
「悪いな」
「ううん、大丈夫!おばさんにまたご飯食べにいくって言っといてね!」
真白が言葉を放った瞬間、周りの空気が一気に冷え込み、憎悪と嫉妬の視線が体を突き刺した。
今にも膝をつきそうだ…だが、諦めるわけにはいかない、俺にはこの後遊ぶを約束した仲間がいるんだ。
おい木藤、なぜお前までその視線でこちらを見てくる。
「ちゃんと伝えとくよ」
「ん、頼んだよ!」
「きふじん、北方くん、矢幡くんもまた明日ねぇ」
「うん、バイバイ姫花」
「また明日な」
「プシュゥゥゥ」
壊れかけてる優也を引きずり、俺たちは教室を後にした。
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