第3話
さっきまでの喧騒から少し落ち着き、各々が席に座り始めた。
「ここが俺の席か」
後ろの窓際の席。
席決めガチャの中ではSSRを引いたと言えるだろう。
窓際の席というのは往々にしてラブコメの出発点になり得る場所だ。
まぁ現実では、からかい上手な同級生がいるわけでもないし、ロシア語でデレてくる女の子が座るわけでもないと分かっている、俺は詳しいんだ。
少しだけ開いた窓の隙間から心地いい風が入ってくる。
朝にしてはパンチが強すぎるイベントの疲れからか、席に座ってからは何も考えず、ただ外を眺めていた。
「おはよ、北方」
後ろから聞き馴染みのある声が聞こえ
ハッと意識を取り戻す。
「木藤か、おはよう」
「また北方と同じクラスね、矢幡も」
「あぁ、朝から騒ぎの中心に巻き込まれたおかげで放心してたよ」
「まぁ、学園のマドンナが3人も同じクラスになったんじゃ騒ぐわよね」
「幸先が不安すぎる」
「あんたも男なんだし、もうちょっと喜んでもいいと思うけど…」
「喜びより不安が優ってしまった」
「そっ」
木藤は素っ気ない返事をしながら俺の席の隣に座った。
「え、クラスだけじゃなくて席もまた隣?」
「なに?不満なの?」
「大満足」
「そっ」
彼女の名前は木藤 杏奈(きふじ あんな)。
さらさらな黒で肩につくかどうかくらいの長さの髪。
それに前髪はかきあげていて、小顔で目は少し鋭いがキレイな形をしており、一般的に見ても美人の類だと思っている。
1年生の夏に入る前頃からの仲で、隣の席になることが多かった。
一年生の秋からに関しては、席替えのくじをしたにもかかわらず全て隣の席だった。
威圧感があるように見えるが、こう見えて結構優しいやつだ。
そう見えるのに、俺も時間がかかったけど。
「何ジロジロ見てんのよ?」
「木藤が同じクラスでよかったなって思ってさ、1年間よろしくな」
「…そっ、よろしく」
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