第十一章

 私は朝に電話した上司に激怒されて、病を押して月曜日の昼に出勤した。まだ熱は三十七度五分あった。シャツの中はジャケットを着ていた頃のように蒸れた。車内と社内の冷房が寒かった。私はもう気が狂いそうだった。こんな状態では、何もまともにできなかった。できる訳がなかった。毎度の動きの度に今自分が何をしているのか考えないといけない程ボーっとしていたし、その考えも熱のせいで遅いので何も事が進まなかった。えーっと、たしか、Excelを見る、何のために、?、今度の会議の出席者一覧を作る。、?、そうか、会議、明日、。何が違う?そうか、資料の中に記載の日付は九月三日(水)だが、?、本当は九月三日は火曜日だ、だって会議は明日、そうだよな、だから、これは間違っている。これは誰がいつ作ったんだろう、?そうだ、先週の金曜日これは作った。私が。この間違いに気付けてよかった。私が。じゃあ、、、…


 午後の五時、ようやく種々の資料をつくり終えた。課長に資料を提出して帰るつもりだったが、書類の束とUSBを渡して二秒後に、「ちょっと、」。「これだけ名前の欄とるなら中央揃えしてよくない?てかこのセル結合してないよね?後々修正するときに面倒だからやめてほしんだよね。てか印刷する前に確認とらなくていいよとは言ったけどそれはミスしない前提だからさぁ、困るんだよね、紙の無駄じゃん。どうすんの?別に自分が払うわけじゃないからいいの?…」




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