第3話「グリフォンとおおきなオオカミさん①」

 おおきなおおきな幻影げんえいが、今のイタリアのトスカーナ地方ちほうあらわれました。


 まっしろくて銀色ぎんいろひかる、おおきなおおきな幻影げんえいでした。


 幻影げんえいむらはたけかうと、おいしそうな野菜やさい人々ひとびとまえでペロリとべてはやまかえっていきました。


 人々ひとびとこまってしまいました。


 そんなうわさはすぐにひろまりました。


 そのとき、まちにとある青年せいねんあらわれました。あかいかみ青年せいねんでした。


 あかいかみいろのように、まっかっかでした。


 このいろ緋色ひいろといいます。


 わしという、おおきなおおきなつばさをもったとりかたせています。


 人々ひとびと青年せいねんはなしかけました。


「きいてください。勇者ゆうしゃさま」


「どうしたんだい。ボクは、このあたりではアルベルトとばれています」


「アルベルトさま! おおきなおおきなしろくて、おおきなおおきなおおかみが、やまからけおりてきては、はたけ野菜やさいらかしてはかえっていくのです」


「なんだって。おおきなおおきなしろくて、おおきなおおきなおおかみだって? 本当ほんとうに、おおきなおおきな?」


「そうなんです。 おおきくて、しろくて、みみさきっぽがくろくて、背中せなかにおおきなおおきな十字架じゅうじか背負せおっていて、おそろしいバケモノです」


「あのコだ! そのおおかみはバケモノじゃないよ! どこのやまったの?」


「あちらのやまでございます」


「よしきた! ボクらがそのおおかみをダメだよって、おしえてきてあげよう!」



 すると、わしというおおきなおおきなとりは、かたからフワリとりて、もっともっとおおきなおおきなつばさをもった獅子しし(ライオン)になりました。


 人々ひとびとはびっくりして、こしかして、地面じめんにおしりいてしまいました。



「わぁ! バケモノだ!」


「ちがうよ。このコはグリフォン。ボクの友達ともだちなんだ。大丈夫だいじょうぶだよ。こわくないよ」



 グリフォンはクォオオオンとこえと、あたまげて丁寧ていねいをしました。


 人々ひとびとはおたがいの顔かお見合みあわせると、グリフォンにをかえしました。


 そして、こわくなくなった人々ひとびとは、いっぱいあたまをなでてあげたのです。グリフォンはうれしそうにクォォオオンとなきました。



「ほおらね。大丈夫だいじょうぶだろう。こわくないよ。しろくておおきなおおきなおおかみさんも、きっといいコだよ」



 そういうと、アルベルトはグリフォンのにまたがってそらあががっていきました。



そらんでる!」


「すごい! 魔法使まほうつかいだ!」


大戦争だいせんそう英雄えいゆうさまじゃあないだろうか!」


「バカいえ、まだ大戦争だいせんそうっただなかだ!」



 人々ひとびとこえは、そらうえのグリフォンにとどいていたのです。



「ここも、戦争せんそうをしているんだね」


「ぼく、戦争せんそうキライだな。なにがたのしいんだろう」



 アルベルトは緋色ひいろかみをなびかせると、二人ふたりやまのてっぺんまであがっていきました。



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