10,加入か、鎮圧か

「それで俺のもとに来たというわけか?」

「師匠、なんとかならないかな?」


 場所は変わり、ブリューナク本拠地。

クロニは彼をブリューナクの一員にできるかどうか、師匠であるネザーに相談している。

彼に頼んだのは、仲間としてブリューナクに加入し、共に戦うこと。

しかし機械を鎮圧するための組織に機械が加入できるかと言われるとほぼ不可能。

そこで彼女は、高い地位にいる人物を後ろ盾にすることを決めた。


 戦闘指南役教官ネザー・アトロフェネル。

教官の地位は上から数えて三番目であるため、実力も発言力もある。

このまま総長が認めれば、彼はブリューナクの一員となるだろう。

だがネザーがヒトであると同時に、機械をよく思わないヒトでもある。

否、ヒトはみな機械のことをよくは思っていない。


「う~ん、戦力が増えるのはありがたいが、な...」


 ネザーは両手を組んで肘を机につけ、唸るような声を上げる。

ちらりとクロニの隣にいる彼の姿を眺める。

白銀の機体フレームにはしる蒼いライン。

彼の容姿はクロニよりも少し年上くらいか。

本来であれば鎮圧するべき存在が、目の前に平然と立っているだけで違和感を感じる。


「やはり僕は入れないのだろうか」

「そりゃお前さんは機械だからな、門前払いどころか即鎮圧だよ。ただ、ここに入る気はあるのか?」

「もちろんだ。探し物もできると思ったからな」


 今のままの彼で探し物をする場合、ヒトに見つからないように探さねばならない。

だがブリューナクに入ることでその心配は要らなくなる。

いずれは第十五都心区まで行くため、ほぼ全域を探し回ることが可能になる。

クロニの提案に少しは拒否の気持ちがあったが、少し考えたのちに加入を決意。


「あるから難しいんだよなぁ...しかもクロニの推薦ともなればすぐに却下はできないし、かといって加入も厳しいし」

「そもそも、師匠は賛成なの?それとも反対なの?」

「う~む」


 彼が敵意のない機械であることはクロニによって証明されている。

それでも快く受け入れられないのは、機械がそれほどまでの敵であるから。


「...お前さん、ヒトを傷つけないと約束するか?」

「僕はヒトに危害を加えることはしない。今ここで誓う」


 ネザーは意を決して、椅子から立ち上がった。

立て掛けてある自分の武器を手に取り、彼に提案を持ちかける。

その表情は先程までと違い、とても生き生きとしている。


「今から訓練場に案内しよう。俺が推薦するかどうかはそこで決める」

「えっ、師匠!?ちょっと待ってよ!」

「問題ない。好きなだけ確かめてくれ」


 彼はそれを了承し、部屋を出るために扉を開ける。

訓練場に向かう二人のあとを、動揺していたままのクロニがついていく。

クロニが動揺するのも無理はない、なぜならネザーは今も現役で戦い続けている戦闘指南役の教官。

ブリューナク内で行われた模擬戦でネザーは六位のクロニを上回る三位。

圧倒的な強者であることは間違いない。


「ちなみに僕はなにをしたらいいんだ?」

「向こうに着いてから教えてやる。言っておくが俺はまあまあ強いぞ?」

「問題ない」

「その心意気やよし。改めて、俺の名はネザーだ。お前さんに名前はあるのか?」


 彼は一呼吸おいて、こう答える。


「僕の名前は...ピリオドだ」

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2024年9月25日 21:00

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