9,協力関係

「僕は誰の味方でもない。探し物をしているんだ。それが見つかればそれでいい」

「ならば私も協力しよう。少しは力になれるはずだ」

「そう簡単には見つからない。それにあなたは...たしかブリューナクという一員。時間を割いてまで協力してもらうわけにはいかない」

「...ふと思ったのだが」


 敵意はないが味方でもない。

扱いの分からない彼の言葉を聞き、クロニはあることに気がついた。


「まさか、ブリューナクを知らないのか?」

「すまない。今まで関わってこなかったからか、情勢には疎いんだ」

「疎い、で済まされるような話ではない。機械ならばブリューナクを知っていて当然のはずだが」

「...どうやら互いに協力しないといけないみたいだ」


 クロニはブリューナクについて、教えられる範囲までは詳しく教えた。

ヒトと機械との終わらない抗争。

機械の危険性を分けるレベル、機構について。

ブリューナクの組織図、自分のこと。

機械を鎮圧するために結成されたのがブリューナクという名の組織であること。

彼がいた場所はブリューナクが規制している区域であることも教えた。


「そうか。本来は入ってはいけない場所だったのか。それは申し訳ない」

「別にいい。たまに無断で入る奴がいるが、生きて戻ってきたケースはまず無い。命があればそれでいいさ」


 彼はどう見ても機械、その認識は変わらない。

だが彼の素振りはヒトと同じで敵意もない。

もしかしたら―――一瞬だけ考えるも、クロニはすぐに否定する。


「本当に、いつになれば終わるのだろうか。数えきれないヒトの血が流れ続けた。だが、機械が減る様子もない。一体どうすれば...」


 嘆きにも似たクロニの独り言に彼が反応する。

ブリューナクを知らないと聞いたクロニのように、今度は彼が疑問を投げた。


「キカイは第十三都心区で生まれているが、ブリューナクはどこまで活動しているんだ?」


 突然の進展にクロニは少しだけ硬直する。

直後に身体が動き、彼の肩を掴んで揺さぶる。


「どういうことだ!?お前は行ったことがあるのか!?しかも帰ってきたのか!?十三都心区のどこだ!?」

「お、お、落ち着いてくれ。そんなに揺らされると機体フレームが歪むかもしれない」


 ハッとしたように我に返り、彼から手を離す。


「すまない。突然のことだったから、つい...それで、なんで知っているんだ?」

「その理由は言えない。だが、第十三都心区にある塔で生み出されている。キカイがキカイを創っているということだ」

「かなり知性がある...A機構であるのは間違いない」

「A機構がどれくらいか分からないが、これだけは言える。今も生きているキカイ、"クゼノ"。彼女さえ倒せば、抗争は終わる」


 かつてパテシバという人物によって創られた機械。

ヒトの心を持っているとまで言われた彼女こそ、抗争の中心。

目的も何も分からなければ、姿すら現れたことがない。


「そのクゼノは...いや、ここで話すのはよそう。代わりに私から頼みがある」

「教えてもらったお礼だ、僕にできることは何でもしよう」


 彼はこの抗争の全容を知っているかもしれない。

ならば味方にすれば間違いなく戦力になるはず。

だが、彼の意志がどうなのか。

深く考えるよりも先に、クロニは彼に頼みを伝えた。

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