11 さりは、いずかと、ずっといっしょ(サリ視点)

「サリ! お前らサリをどこに連れて行くつもりだ。返せ! サリ」

「いずか、いずかぁぁぁ!」

 いずかがよんでる。

 さりは、いずかのそばにいなきゃだめなのに。


 閉じ込める檻は狭くてどれほど暴れても出られない。武器も上手く機能しなくて何もできないままイズカから引き離されていく。


「いずか!」

「サリィ!」


 いずかはさりに、たくさんのものを、くれた。

 おいしい、うれしい、あたたかい、しあわせ。


 ぜんぶいずかが、さりにくれた。

 さりも、いずかにたくさんあげたい。

 いずかとさりは、あいぼうで、ずっといっしょ。

 いっしょじゃなきゃ、いやなの!


「どんなに暴れても無駄だぜ。お前みたいのを捕まえる特殊な檻だからな」

「いや! だして! さりは、いずかのとこ、もどる!」

「安心しな。いい飼い主さがしてやるからよ」

「いや! いずかといっしょ!」

 檻を持っている指に噛みついた。

「痛ってぇな、このネズミが風情が!」

「……! ぎゅ……っ」

 檻を地面に叩きつけられ息が詰まる。


「てめぇのだーいすきなイズカの事も、ちゃんと魔術で忘れさせてやるから安心しな、よっ!」

「ぎゃん……っ!」

 鞘に収めたままの剣で隙間から何度も突かれる。

 逃げられずされるがまま何度も殴られて、動けなくなった頃ようやく剣を収めた。


「静かにしてろ。ネズミがっ。くそ、売る前に治癒魔術をかけなきゃならんくなった。面倒臭ェ」


 檻を持ち上げられたのが分かったが、痛みで体が動かない。

 体中がズキズキと軋み目が開けられない。

 このままではイズカと引き離されてしまう。

 



 いたい、いたいよ……。


 いずか、いずかのとこにいきたい。


 いずかのそばに、いたい。


 いやだ、はなれたくない……!



「サリ!」


 いずかがよんでる。

 さり、いかなきゃ……。


 さりは、


 いずかの……。


「サリを返せ!」



 そばにいたい!



「サリ!」


 さりは、いずかのあいぼうだから! 


「いずかぁぁぁぁ!」


 力の限り大好きな相棒の名を呼ぶ。


「サリィィィィ!」


 あの声に応えたい。

 傍に居たい。


 サリは、イズカの相棒だから。


 ずっと一緒、いつも一緒。


 サリは、イズカと、一緒に居たい!!


 強くそう願った。

 その途端、体内に溜めていた魔力が急激に体中を巡り出す。


「イズカァァァァ!」


 イズカの、傍に行くんだ!!


 魔力が爆発した。


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