エピローグ

僕は変身したまま美人ちゃんの前に移動する。


「どうだ?

100万円では安いぐらいだろ?」

「そんなに強いのに、なんでそれを平和の為に使おうとしないの?」

「使うさ。

お前が金さえ払ってくれればな」

「そんな大金――」

「上の偉い人に取り合ってみることだな。

どうせ税金だろ」

「みんなは見返り無しで戦っているのに」


ナイトセイバーは国防費で賄われている。

つまりは税金だ。


あいつらは正義感で戦っていて、お金を貰って無いかもしれない。

だけど、そんな事は僕には関係無い。

むしろ、汚い大人達に騙されて哀れみさえ覚える。


どんな感情を出したらいいか悩んでる眼差しで僕を睨んでいる美人ちゃんを顎クイして見つめ返す。


「どうしても金が用意出来ないならお前の体で支払って貰ってもいいぞ。

100万円分のご奉仕は大変だろうけどな」


美人ちゃんの感情が怒りに塗り潰されて、顔が真っ赤になった。


僕はそれを笑い飛ばしてから離れて行く。


「そうだ。

僕の正体をバラしてもこの話は無しだ。

あと、金は現金手渡しのみ。

お前が持って来い。

それ以外は受け付けない」


最後にそう言い残して僕はその場を後にした。



僕の家は町外れにポツンとある。

当然そこに続く道は殆ど誰も通らない。


そんな道の傍に青年が立っていた。

僕はそれを無視して通り過ぎた。


「また、友達が死んだんだ」


青年は悲し気な声でそう言って僕の後ろをついて来る。


「毎回、種として生き残るのは大変な事だと痛感するよ。

弱肉強食とはよく言ったものだ」


無視する僕に構わず喋り続けている。


「新たなナイトセイバーが現れたんだ」


今度は残念そうな声を出す。

相変わらず感情が分かりやすい奴だ。


「あ〜あ。

今回の友達は上手くいきそうだったのにな〜

私達トロイノが新しい種として確立されるのにはまだまだ力が必要みたいだ」


トロイノ。

未確認生命体の正式名称。

そしてこいつが実質ポスのムガイ。


「せっかく君にナイトセイバーを手負いにしてもらったのに、新キャラとか聞いて無いよ〜

またお願いすると思うんだけど、いいかな?」

「金さえ払うならな」


僕の答えにムガイは満足したように頷く。


「もちろんさ。

一回戦闘事に100万円。

ちゃんと用意するさ。

じゃあまたよろしく頼むよ。

イービルナイト」


そう言ってムガイは消える。


これで完璧だ。

僕は依頼が有れば時にはイービルナイトとしてトロイノを助け、時にはホワイトナイトとしてナイトセイバーを助ける。

でも、トロイノの幹部とナイトセイバーは決して殺さない。


そうやって戦いが長引かす。

長引けば長引くほど、僕の需要が増えて稼ぎが増える。


この戦いは終わらせない。

人々の平和とか、種の生き残りとか知った事じゃない。


僕は僕の為にこの戦いを利用する。

ただそれだけだ。

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