第15章 暗殺者と言うにはあまりにも

「さあ、答えてください!何故こんなことを?」

「…」


 黙り。まあ暗殺者アサシンが答えるなんて思ってないけど。

 何はともあれ、一旦の無力化に成功した。


「無駄かな。殺すか拘束して置いていこう」

「うーん……せめて何か情報を――」


 は――


 首が――落ちている。

 暗殺者アサシンの首が。


 フードが取れ、虚ろな瞳はこちらをじっと見つめていた。

 音も無く、気配も無く、悲鳴すら上がらず。


「ライラさん!これはッ!」

「居る!まだ暗殺者アサシンが!」


「はぁ〜あ。ったく、しくじりやがって」


 目の前。

 首。

 持ってる。

 誰の?

 暗殺者アサシンの。

 何故?

 転がってたはずじゃ。


 ――コイツは誰だ?


「どけ、支援者サポーター

「がっ……」

「ライラさん!」


 痛い。だが意識を失う程じゃない。

 けど立てない。地面に這いつくばうことしかできない。


「かひゅっ……なにを……した……!」

「お前はまだ殺さない。あのおもしれぇ魔法を使うガキの方を殺してからだ」

「…!」


 ダメだ。勝てない。レンじゃコイツには、勝てない。

 全盛期の私でも勝てるかどうか。


「レンっ!……にげっ……て!!!」

「……無理です。ライラさんを置いて行く選択肢はありま――」


「逃げれると思ってんだ」


 速。見えなかった。


「はぅあっ!!」

「お、避けるか。結構本気だったんだけどな」


 まさに間一髪。多分、次はない。


 〜◯◎◉◎◯〜

「お前は誰だ……!」


 目の前の男は短剣を器用に回し答える。


「あ、俺?じゃ、冥土の土産かな、教えてやるよ」


「俺はアナテマ。今はお前を殺す者だよ」


「随分と簡単に話しますね……さっきの男の方が暗殺者アサシンに向いてたんじゃないですか?」


 時間稼ぎにしかならないのはわかっている。だけど隙を見せてくれれば、何か……!


「恐れる者ほどルールによく従う。見た奴聞いた奴全員を殺せばいい話なのに、丁寧にせっせと待ち伏せして暗殺する。バカな話だ」

「なっ……」


 何を言っているんだ、こいつは。

 暗殺者アサシンとしてあまりにも考えが離れていて、だがこの強さにはそれを納得させる力があって。


「もういいか?」

「っ……蛇腹剣!」


 先制する。仕掛ける。陽動でもなんでも、気を引け。隙を見つけろ。


「掴んだ!」


 蛇腹剣が巻き付く。アナテマの動きを縛った。はずだった。


「これは……魔力の塊か。中々に良い大道芸だが、如何せん耐久力に欠けるな。脆い」

「は――」


 千切れた。蛇腹剣が。

 それは解れた糸を千切るが如く、いとも簡単に。


 ――勝てない。


 体が、心が、本能が、そう言っている。


「ネタ切れか?なら――」


 短剣が、近付く。心臓に目掛けて、一瞬。


「レェェェェンッ!!!」


「!……支援者サポーター?何故……立っている?」

「ライラさん!?ダメです!逃げてください!」


 地面に伏せていたライラさんは、立っていた。俺の名前を叫びながら、堂々と。


 そして、右手の甲を煌々と光らせながら。


「ふっ……ふっはははは!はなんだ!?面白い!」

「ガァッ……!」

「レン!!」


 片手間にやられた。足が、足が折られた。これじゃあもう動けない。

 ライラさんが、危ない!!


「ライラさんッ!!」

支援者サポーターッ!!見せてみろッ!!」


「……レン、大丈夫だよ」


「あ?」


 ライラさんに襲いかかるアナテマは、宙に舞っていた。

 当の本人も何が起こったか理解出来ず、困惑している。


 一息、そしてライラさんは、煌々と光る拳を握った。


「ルールは守るものだよ、おバカさん」


 第15章

 暗殺者と言うにはあまりにも

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