第14章 私に出来ること

 暗殺者アサシン支援者サポーターのような後衛ではなく、かと言って前衛職まではいかない。それが暗殺者アサシン


 基本的にヒットアンドアウェイの戦術を使い、急所を的確に狙ってモンスターを屠る。

 その戦闘スタイル故に、素早く、身軽。

 音もなく敵に忍び寄り、抵抗の間もなく斬り伏せる。


 一つのジョブではあるが、迷宮の踏破を目指す者や、モンスターを狩り生計を立てる者では選択者の少ないジョブだ。


 そう、暗殺者アサシン。その多くは――


「迷宮内での金品強奪目的の使用……!」

「だから暗殺者アサシンは人気ないんだよーって右!」


 ステップで一二と躱す。私を抱き抱えての動きでここまで素早いのなら、レンは十分やりあえるはず。


 問題は私だ。

 私がいなければレンは勝てる。

 私がレンの足枷になってる。


 ならどうするか。


「レン!私を降ろして!」

「なっ!ダメです!ライラさんが狙われたらどうするんですか!?」


「それが狙いなんだよ」


 私を抱き抱えたままじゃいつまで経っても防戦一方。いつか押し切られて終わりだ。

 だけど、私が離れたら?

 意識は二つに分散し、確実に殺せる私にヘイトが向くはず。


 意識が分散した時点でこれは私達の勝ちだ。


 何故ならレンは強いから!


「狙われるよ、私」

「っなら!」

「だから守って!私が殺される前に暗殺者アサシンを倒して!!」


 レンの腕を振りほどき走る。


 気配を追え、そして感じろ。


 右?左?それとも――


「後ろ!!」


 ドンピシャ!背後からの接近を姿勢を下げ回避する。

 体力は衰えど勘は衰えておらず。

 まだまだやれるねぇ!


「何が目的なの!暗殺者アサシン!」

「…」

「応えないか……徹底してるね!プロかな?」


 暗殺者アサシンなんて正体が暴かれなければ暴かれない程有利になる。

 よって会話に応じないは最適解なのだ。


「レン!見極めて!今のレンなら、暗殺者アサシンのスピードに並べるはずだよ!」

「ぐっ……はい!」


 って、人のこと言ってる場合?

 避けなきゃ死ぬ。どれくらい耐えられるかは、私次第。

 根性見せろ!私!


「左だァァァァ!!!」


 〜◯◎◉◎◯〜

 避ける。ライラさんが、避けている。

 回避に次ぐ回避。それは全てにおいて今までの知識と経験を駆使した勘。

 武器が使えずとも。

 体力が衰えてようとも。


 彼女は――俺が憧れた、ライラ・ブレイヴィなのだ。


「期待に応えなきゃ、ですね……」


 ライラさんなら、避けれる。

 落ち着け、良く見ろ。


 いつ出てくる?

 ライラさんに攻撃する直前。


 どこから出てくる?

 狙いはライラさん。つまりはライラさんの周囲。


 ならば――


「創造、形成。形作るは悪を捕らえし茨のつるぎ


「喰らいつけッ!蛇腹剣!!」


 〜◯◎◉◎◯〜

「あれは……何時ぞやの蛇腹剣……!ふっ!」


 前のよりも長く、まるでそれは剣というより鞭、魔追鞭まついべんのようで、それでいて鋭い刃が付いている。


「ライラさんは警戒を!」

「了解っ!」


 感じる。暗殺者アサシンの動揺が。


「初めて見た?レンの魔法!」


 その動揺は、この場においては命取りとなる。

 気配が漏れる。場所が解る。


 


「レンッ!私の頭上!」


「ハァッ!!」


 蛇腹剣は伸び、私の頭上に。


「ガァアァッ!!?」


 そして、


 血が、血液が。


 蛇腹剣は黒いフードの男の腹を抉り、巻き付いていた。

 痛々しく食い込み、男を苦しめる。


「こっちへ……来いッ!」


 男は血飛沫を飛ばしながらレンに引っ張られる。

 そして勢いよく地面に転がり、レンの足元に。


「捕らえましたよ。暗殺者アサシン!」


 第14章

 私に出来ること

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