第12章 秘密

「ライラさん!上に続く道がありました!」

「じゃあ正規の道に合流出来たのかも」


 私が倒れてから数十分。やっとこさ上に続く道を発見した。

 もしかしたら誰が冒険者と会えるかもしれない。

 そんな期待を胸に階層を上がる。


 相変わらず景色は変わらない。水の流れる音は少し大きくなっただろうか。

 早く進もう。調子が良いうちに。


「体調、大丈夫ですか?」

「うん!元気元気、今までの疲れが嘘みたいだよ」


 体力が落ちたなぁなんて思っていたけれど、もしかして回復速度とか上がってたりするのかしら。


「無理は、止めてくださいね。本当に」

「え、あっうん。わかった」


 急にトーンを落とすから少し動揺した。

 レンってこんな低い声出るんだ。

 あんまりはしゃぎ過ぎないようにしよう。


 〜◯◎◉◎◯〜

「う〜ん、喉が渇いた……」

「ん、喉渇きました?俺が行ってきます」

「私も……」

「俺が行ってきます」

「あ、でも」

「俺が行ってきます」

「……はい」


 なんか……。


「ライラさん、そこ……水辺です。危ないので離れてください」

「え、うん」

「それがそっちを歩きます」


 なんだか……。


「ライラさん、もう少し俺の近くに、そう、離れないで」

「あわわ……」


 なんだかレンが過保護だ!?

 一体全体どうなってるの!?

 それに絶対水辺に私を近寄らせないし……。


「ちょ、近いよ……レン」

「いえ、何かあってからでは遅いので。手、繋ぎましょう」

「えっ?えぇ!?えぇぇ……」


 気付けば手を握られていた。前まで私から握っていたのに!


「さ、行きましょう」


 まるで初めて手を繋いだ時のレンとは別人みたい。

 レンとの距離が近くて、だけど意識してるのは私だけで。

 立場逆転。私の方が初な女になってるよ!?


 なんでだろう。とことん水辺から私を避け、近寄らせない。


 まさか――


「ねぇレン……私さ、意識失う前のこと殆ど覚えてなくて」

「……はい」

「レンが助けてくれて、特にそれ以上聞くことはなかったんだけど」

「……そうですね」

「何か、あったんだよね?」

「…」


 徹底的に水辺に近寄らせない動き、前にも増して過保護なその行動に流石の私でも察しちゃうよ。


「そう、ですね。はい、確かにありました。確かに」

「なら」

「だけど、ライラさんには教えられません。貴女が知ればまた無茶をするかもしれない」

「無茶って……した覚えはないよ。それに教えられないって」


 レンの手に力が入る。私の手がぎゅっと潰される。


「痛っ」

「あっ、ごめんなさい!」

「……とにかく、教えられないって、どういうこと?……私に、何があったの?」


 咄嗟に手を離してくれる。

 しかし答える様子はない。


「それは……」

「……そっか、答えられないか」

「…」

「私、そんなに信じられない?」


「そうですね、ライラさんの利他的なところは、正直」


「あ、そーなのね」


 まじかよ。


「……でも、ライラさんのことでもあるので、うーん」


 頭を悩ませるレン。少し揺らいで来た様子。


「ね、今の私はどんなことでも知っときたいの。もしもそれが、呪いに繋がることだとしたら?」

「ギクッ」

「あ」


 ドンピシャだ。これ。

 呪い関連のことだ。これ。

 なら尚更聞かなくちゃいけない。


「呪いのこと、なんだね?」

「……そう、です」

「教えて、私、本気だよ」


 引き下がる訳にはいかない。絶対に。


「でも……」

「わかった。私、絶対無茶しない。約束する」


 多分、レンはそれを私が知ったら無茶をすると思ってるんだと思う。

 ならその不安を絶ってしまえばいいわけで。


「私を、信じて?」

「うっ……はぁ、わかりました。どの道隠し通すのは難しそうですし」

「やったぁ!」


 そして、レンは口を開いた。


 第12章

 秘密

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