第11章 呪いの証

「――さん!ライ――さん!」


「ライラさん!!」


 ん、なんだかデジャブを感じる……。


 身体が重い。意識もハッキリとしない。


 それなのに手の甲が、その証が、熱い。

 熱くて熱くて、燃えてしまいそうなくらいに。


「うぅ……あぁ…熱い……!」

「ライラさん!?大丈夫ですか!?」


 レンの声が耳に響く。ボヤボヤとした視界で動く人型を見る。


「レン……いるの……?」

「はい……!います、いますよ……!」

「私……生きてる?」

「生きてます!」


 安心した。

 生きてる。生きてるんだ私。

 ダンジョンオクトに腕を掴まれ、首を締められ、そこから覚えていないけれど、きっとレンが助けてくれたんだろう。


「ありがとぉ……レン」

「……?何を言って――」


「好きだよ」


「は――」


 〜◯◎◉◎◯〜

 今、なんと?


「ライラ、さん。今のは……」

「んぅ……?わかんない」


 ぽわぽわしていて話が通じない。

 今のは、今のは一体……。

 好きだよなんて、そんな。


(嘘でしょう!?)


 も、もしも両思いだとしたのなら、どうする?

 初恋の人ライラさんと結ばれる可能性があるのなら、どうする?


 据え膳食わぬは男の恥。


(だけどこれはノーカンなのでは!?)


 意識のハッキリとしていない状態での発言。

 これを真に受け正気に戻ったライラさんに、


『あはは……ごめんね、覚えてないや……』


 なんて言われた時には――


「あ、涙出てきた」


 ぐすん。


 聞かなかったことにしよう。それが一番平和な気がする。


「しかし……一体あそこで何が起こったんだ?」


 一応の為に持ってきた、ライラさんの近くに落ちていた魔石。

 何の魔石かは関係ない。重要なのはということ。


 今のライラさんではモンスターを倒すことはできない。


 なら誰が、どうやって?


「いや……倒したのはライラさんだな」


 付近に少なくとも人間は居なかった。魔力の残滓も気配もなかった。確信できる。


 なら消去法だ。消去法でライラさんが倒したことになる。


 誰がはライラさん。

 そうなると残りはどうやって手段


「一体どう――」

「熱いぃ……!!」

「ライラさん!」


 再び熱いと呻き出すライラさん。


「なんで……あっ!」


 手の甲の、呪いの証が淡く、光っている。


「これは……一体……」


 触れてみる。


「熱っ」


 熱い。多分これがライラさんが言っている熱い部分だろう。


「うぅ〜ん……」

「光が……」


 淡い光は静かに消えてしまった。それと同時に熱さも収まり、ライラさんも静かに息をし始めた。


「……呪いに何かあったのか?」


 ライラさんが戦えない原因である呪い。

 逆説的に言えば、戦う為の唯一の手段でもある。

 もし、呪いが何かしらの力でモンスターを倒したとすれば?


「――これは、ライラさんを変えてしまうかもしれない」


 危険だ。これは。

 これはきっと薬になる。

 そして毒にも。


 ライラさんにはこのことは秘密にしておこう。


「心配だ……」


 〜◯◎◉◎◯〜

「んっ……私……」


 目が覚め、起き上がる。


「ライラさん、目が覚めたんですね」

「う、うん、私、記憶が曖昧で、レンが助けてくれたんだよね?」

「…」


 沈黙、少しした後口を開いた。


「――はい、間一髪でしたよ」

「……そっか!ありがとう!」


 本当に、助けられてばっかり。


「さ、上に続く道を探そう!」

「大丈夫ですか?もう少し休んでも……」

「なんかスッキリしてるんだよね、今。なら進むしかないでしょ!」


 身体が軽い。なんだか身体から余計なものが抜けたような、そんな感じ。

 ともかく、今の私は元気一杯ということ。


「それじゃ、出発!」


 第11章

 呪いの証

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