第7章 命の恩人 上

 ここまで進んで、ふと思ったことがある。


 ――何故彼は、こんなにも協力的なのだろうか?


 湧いて当然の疑問だと思う。

 私の命を救ってくれたり、私の呪いを解こうとしてくれたり。

 彼はあまりにも協力的過ぎる。


 あまりに素直で、あまりに健気で。


 私には彼がわからない。


 だから聞いてみることにした。


 問題の先延ばしはよくないのだ。


 〜◯◎◉◎◯〜

「ね、レン」

「なんですか?」


 十二階層。十階層と対して変わらない大森林。

 しいて変わった点を挙げるとしたら、霧が濃いくらいだろうか。

 あいも変わらず私達は、逸れないように手を繋ぎ進んでいた。


「膝枕、いる?」

「えっ!?えっと……欲しいかも……です」


 可愛いなこいつ。


 〜◯◎◉◎◯〜

「どう?痛くない?」

「は、はい……ダイジョウブです」


 二回目なのに声が震えているレンに思わず笑ってしまいそうになる。


「私、レンに聞きたいことがあるんだよね」

「?」


「レンはさ、なんでこんなに協力してくれるの?」


「なんで、ですか……」

「わっ」


 起き上がるレン。対面に座る。


「単純ですよ」


 少し紅潮した頬、まるで迷宮に誘われた時を彷彿とさせるような、そんな顔。


「――貴女が、命の恩人だから」

「え?」


 彼は私の命の恩人で、私は彼の命の恩人?


「あれは、五年前のことでした」

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