第5章 予想外の出会い
十階層。九階層までとは違い、端から端まで木々が生い茂る大森林となっている。まぁ端まで探索できているか不明なのだが。
地下迷宮なのにこんな高木が堂々立っているというのは迷宮の謎の一つだ。
「いつ見ても緑の海だねぇ」
「本当ですね。迷宮の中とは思えません」
光が差さず、少し霧がかっていて視界が悪い。
「あの、ライラさん」
「んー?」
「今のライラさんとはぐれたら大変です。絶対に離れないでくださいね」
今の私は
命綱はレンが握っている、というかレン自体が命綱みたいなもんである。
私は離れないようにぎゅっとレンの腕を抱きしめた。
「ちょっライラさん!?」
「どした」
「ちかっ近くないですか!?」
「え、離れないでって」
「あぁあぁの!もし戦闘になったら!大変なので……もう少し……離れていただけると……」
顔が真っ赤。確かに戦闘になったら大変か。
手を繋ぐ程度に留めておこう。
「ね、これならいいかな?」
「……はぃ。大丈夫ですぅ……」
さぁ進もう。
〜◯◎◉◎◯〜
手を繋いで進むこと数十分。
幸いモンスターにも出くわさず、順調に進んで行けている。
「別の意味で迷宮の中とは思えないねぇ」
「ですね。平和です……というより、先に来ている人がいるみたいですよ」
「え?」
「ほら、見てくださいこれ」
そういってレンが指差すのは樹木。
近くで見てみると明らかに人為的な切り傷があった。
「なるほど、迷わないための印か」
「霧が多いですから」
「修正力がまだ作用してない。まだ近くにいるね」
と言ってもこの程度でも修正力が働くまで数時間の余裕があるのだけれど。
「まぁモンスターを先に狩ってくれてくならこちらとしても御の字です」
「安全なら手、離そっか」
「いえ!!何があるかわかりません!手は繋いでおきましょう…」
「あははっわかったわかったから。手、繋ぎ直そ?」
かわいいなこいつ。
〜◯◎◉◎◯〜
「あ、やべ」
「あ?なんでここにいやがンだライラァ!?」
珍しくパーティー組まずソロで来ている様子。
「……イエ、ワタシ、ライラ、シラナイネ」
「明らかにライラだろお前!」
ズカズカを詰め寄るランドに、身を隠すようにレンの後ろに隠れる。
「ちょっと、ライラさん困ってるじゃないですか」
「あ?」
「はい?」
「あ、まずいかも……」
互いに睨み合う二人。険悪な空気の中、始めに動いたのはランドだった。
「お前、ライラのなンだ?」
「俺は……その、ライラさんのお手伝いを……」
「……まさか、呪いを解こうってか?」
感が鋭いんだよなぁランドって。知られると面倒くさそうだから言わずに来たのに。
それに今は
「それは……」
「そうだよ」
「ライラさん!」
「大丈夫、ちゃんと言うよ」
隠れるのを止め、ランドの前に立つ。
特別隠すことでもないし、ランドも頭が固いわけでもないし、話せばわかってくれるでしょ。
「ランド、実はね――」
〜◯◎◉◎◯〜
「ンだよ。そういうことか。腕の立つ冒険者が護衛にいンなら俺は別に文句ねェよ」
「でしょ?」
良かった。穏便に済みそう。レンは話が終わったとばかりに歩き始めた。が、それにランドが立ち塞がった。
「だけど知ってンだろ。俺が確かめなきゃ気が済まねェ奴だってこと」
ランドは腰に下げてある双剣を取り、構える。
「手合わせだ。お前がライラを護衛するに相応しいか確かめてやるよ。レン・ファンド」
「…受けて立ちますよ」
呪いがなければ混ざるんだけどなぁと思った。
「ほどほどにね」
「おう」「はい!」
第5章
予想外の出会い
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