第3章 創造魔法

 目が覚める。今日は迷宮に潜る日。


「んーっと……準備しなきゃ……」


 顔を洗う。一日の目覚めにはこれだ。

 そしてご飯。今日はトースト一枚を齧る。


「着替え、着替え〜っと」


 今の私は支援者サポーター、そのことを考えて準備しなければならない。

 前線を動き回るために、荷物はいつも最低限だったが、今回は違う。


「大きめのリュック……あった、これでいっか」


 大きいリュック。パーティーを組んでいる人達は、支援者サポーター採集者コレクターがこれを持って共に行動する。

 これによってポーションや迷宮内での収集物を沢山持つことができ、一度の収穫量が大きく変わってくる。

 まさか私がこの役割をする日が来るなんて思ってもみなかったけれど。


「動きやすいように軽装で……あ」


 忘れられない。忘れちゃいけない。

 腰に剣を下げる。

 そうだな、使えるようになるまでは、お守りとして持ち歩こう。


「……いってきます」


 玄関を出た。


「そういえば彼の実力ってどれくらいなんだろう……」


 少し、胃が痛くなった。


 〜◯◎◉◎◯〜

「や、やほ」

「おはようございます!」

「早いね。おはよう」


 キリキリと痛む胃。ここに来るまでに色々と嫌な想像をしてしまった。

 17階層まで行けるほどの実力を持っているのか、とか。

 支援者サポーターとしてうまく立ち回れるのか、とかとか。

 ここまで来たからには腹を決めるけども。


「それじゃあ、行こっか」

「……はい!」


 結果として、この心配は杞憂に終わる。


 〜◯◎◉◎◯〜

「ハァッ!」


「フッ!」


「セリャッ!」


「……凄いな」


 6階層。まだまだ上の方とはいえ、結構なモンスターの量。

 それを彼、レンがバッタバッタとなぎ倒していく。

 それに加えてあの魔法?状況に応じて形を変える魔力の塊。

 私を助けた時の大剣もきっと同じ魔法だろう。


(剣に、大剣、槍に斧。バリエーションが多いな……あ、蛇腹剣に変えた!)


 彼が独自に開発した魔法だろうか、私の知る限りでは聞いたこともない。


「ライラさん!大丈夫ですか〜!」

「あ、うん。レンこそ大丈夫?」

「大丈夫です!……あ、でも少し休みましょうか」

「そう?わかった」


 レンと呼んでいるのは彼自信から「呼び捨てで!レンって呼んでください!」と言われたからだ。

 決して顔の良い懐っこい弟が出来たみたいで嬉しいからではない。嬉しいからではないのだ。


「ねぇレン、さっきから使ってる魔法?って」

「あぁ、創造魔法ですか?」

「創造魔法?」

「俺が開発した魔法なんですけど、土魔法の応用で、土魔法って魔力の流れを付近の土や岩に流して形状を覚えさせるじゃないですか」

「う、うん」

「その場合、元となる土や岩と魔力の割合は大体七対三になるんです。七割の土を付近から削り、そこに三割の魔力を流すことで、自由に動かすことの出来ると呼ばれるものができるんです」


 ……難しい。既に頭がパンクしそうだ。

 噛み砕いていうのなら、七割の砂に、三割の水を合わせ、混ぜる。

 そうすると砂は一纏まりになり持つことができるようになる……みたいなことだろうか?

 むむむ…難しい。


「その割合を弄るんです。俺の場合魔力が八の、核となる物質が二の割合になってます」

「核となる物質?」

「鉄でも木でも、それこそ土や岩だって核になりえます。わかりやすく言うなら骨組みですかね」

「骨……」

「そうです骨です。でも骨だけだと脆いので、そこを魔力という肉で補強してあげるんです」


 つまり魔力を混ぜ合わせるのが土魔法で、纏わせるのが創造魔法ということだろうか?

 だけどそれだと問題が挙がる。


「それさ、魔力消費ヤバくない?」

「ヤバいですよ。ヤバヤバです」


 魔力が三割程度の土魔法に比べ、魔力が八割ほど持っていかれる創造魔法は、普段魔法を使わない私でもわかるほどコスパが悪い、悪すぎる。

 それなのにレンは先程の戦闘でバンバン使用していた。

 つまりレンは有り余るほど魔力を持っているということになってしまうが……。


「そ、そんなに魔力が…?」

「まさか!並よりかはありますけどそれでも到底八割の魔力を常に消費はキツイですよ」

「じゃあなんで……」

「ちょっとした裏技みたいなやつです」


「このあと見せてあげますね」とレンはにっこり笑うのだった。


 第3章

 創造魔法

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